昨年11月末から参加した台湾でのアジア・ウインターリーグ中、朝目覚めて起き上がろうとした瞬間に再発した。症状を言えば帰国になるかもしれない。誰にも言わずに我慢。1カ月間を戦い抜き日本へと戻った。

 体の不安も軽減し、フォーム改造に着手した。体が横振りになり直球がシュート回転する原因になっていた投球フォームを、縦回転に意識した。春季キャンプでも徹底し固めていった。「たまにいいときの映像は見るけど、懐かしいと思うだけ。今のフォームしか見ない」。過去を振り返らず、今だけ見つめた。力強い真っすぐを取り戻した。

 13年ドラフト1位で華々しく入団した際は720万円あった推定年俸も、昨年1軍登板がなく450万円となった。「チームに貢献したい。これからもっともっと頑張っていきたい」。崖っぷちだった21歳が、はい上がる。【宮崎えり子】

<鈴木翔太(すずき・しょうた)アラカルト>

 ◆生まれ 1995年(平7)6月16日、静岡・浜松市。小1から野球を始め、5年から投手。聖隷クリストファー(静岡)では甲子園出場なし。13年ドラフト1位で中日入り。

 ◆絶賛 入団当時の谷繁監督が「高校生であんなバランスの取れたフォームは見たことがない」と驚いた。1年目の6月、西武戦で早くも1軍デビュー。

 ◆もってる男 仮契約の当日、浜松市のホテルで同市に本社を置く自動車大手スズキの鈴木修会長とばったり。以来「浜松のスズキ」として応援してもらっている。今年1月に自主トレしたオーストラリアでは、知り合いの紹介で落語家桂ざこばと初対面。3度も食事をともにした。

 ◆飛躍 伸び悩みと故障で、昨年は初めて1軍登板なし。フォームを改善し、昨年12月のアジア・ウインターリーグ(台湾)にウエスタン選抜で参加。決勝戦に先発し勝ち投手に。

 ◆サイズなど 右投げ右打ち。183センチ、74キロ。家族は両親と弟。今季推定年俸450万円。