プロ13年目の苦労人が驚きの放物線を描いた。阪神岡崎が1点を追う4回、メンドーサのチェンジアップをとらえた。打球は左翼席に飛び込む。値千金の逆転2ランだ。「昨日は大事な場面でスクイズを失敗して、でも絶対にやり返すという強い気持ちで打席に入った」。まさに気持ちで打ったプロ初アーチだった。

 前夜にはスクイズ失敗で相手に流れが移り、逆転負けを喫した。4回の打席では初球に空振り。金本監督は連日のスクイズを指示しようかと思った。しかし2球目も空振り。サインを出すタイミングを逸してしまった。そこから本塁打が飛び出すから、野球はおもしろい。金本監督は「あぜん。何が起きているのか、一瞬、分からなかった。今日の活躍が生涯最高で最後に…、ならないようにがんばってほしい」と、驚きを隠せなかった。

 8回には中前打を放ち、8年ぶり2度目となる猛打賞を記録した。お立ち台では、思わず目をうるませる姿があった。「まだまだへたくそなんで、失敗もすると思いますが、絶対にやり返すという気持ちでがんばっていきたい」。チームの連敗を「2」で止めた。広島の1人勝ちを許さず、2位で追走。自身にもチームにも大きな意味のある1号だった。

 ▼13年目の岡崎が、プロ初本塁打。04年に投手の工藤(巨人)が、23年目で初本塁打を記録しているが、野手では83年石山(近鉄)の14年目に次ぎ、05年田原(西武)10年飯山(日本ハム)11年井生(広島)に並び、2番目に遅い1号となった。