巨人の試合での直接的な敗因は、監督の采配、コーチ陣の指導力、選手の力量や作戦実行能力など、さまざまだろう。だが歴史的連敗の根幹の要因は現場だけでなく、組織力、つまり巨人軍そのものにあると思う。

 現行のドラフト制度となった08年以降の新人獲得の系譜を見る。長野、沢村、菅野、田口。主力打者、先発ローテ、救援陣の柱といった“軸”の選手は限られ、年を空けてしか出てこない。破竹の広島と比べると今村、中崎、野村、菊池、鈴木、大瀬良、田中、岡田。間を置くことなく毎年のように新しい芽が出る。

 広がる格差は何か-。昨年ドラフトを除けば、近年は競合を避け、単独指名するケースもあったドラフト戦略や、不運なクジ運もある。入団した素材を育てられなかった指導力もある。育成が機能していなければ、適材適所で機能するように指導者を変えられなかった球団の眼力も問われる。無類の強さを誇った07年から将来を見据え、正しいビジョンを描けていたか。長年、蓄積されたツケが今、回ってきているとしか見えない。

 今季クリーンアップはリーグ2位の打率2割8分9厘、22本塁打、91打点(53試合)。トップの広島の2割9分3厘、26本塁打、109打点(55試合)と、遜色はない。ただ周囲の面々が弱い。4月までの好調は阿部の爆発力が引き寄せ、坂本勇が加速させた。だが阿部が不振になった5月以降に、育成できていない現実が惨敗となって表れ始めた。阿部依存のチームに未来はない。

 9連覇を成し遂げた名門は常勝を課されている。他球団とは重圧が決定的に違う。高橋監督が就任1年目の昨季は球団幹部から「もう少し結果にとらわれず、若手を使ってもいい」と私見が出た。だが巨人一筋の指揮官には「優勝至上」のDNAが流れている。思考を否定することはできない。ただ組織としては現実と向き合う必要がある。勝利と育成。後者にウエートを高める転換期が来ているのではないか。弱さを自覚すれば、現場での戦い方とともに、おのずと進むべき道が見える。【巨人担当キャップ 広重竜太郎】