中日荒木雅博内野手(39)が通算2000安打を達成した。打撃が苦手な男がなぜ名球会入りできたのか。「心・技・体」の3回にわたって秘密に迫る。最終回の今日は「体」。

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 荒木は小学校でソフトボール、剣道、サッカーと習っていた。中学では野球に陸上。運動神経は陸上やバレーボールをやっていた母良子さん(63)譲り。大きな病気は小1のとき肺炎で入院したくらいだ。

 熊本工では決して突出した存在ではなかったが、早川実スカウトの推薦で、ドラフト1位指名された。当時の星野仙一監督は「そんな選手知らん」。それでも「キャンプで身体能力を見て、ひょっとしたらと。木から木にわたるサルのようだった」と振り返る。打撃を酷評されても、強い体がプロでの命綱になった。

 猛練習にも耐えられた。星野監督は「福留、井端、荒木には特別メニューを課したが、3人はそれに耐えた。ノッカーの高代コーチが肘を壊して手術したくらいだから」。その後の落合博満監督時代、常勝軍団のレギュラーになっても井端と競うように特打、特守の毎日。中日キャンプの象徴的シーンだった。

 ケガに耐える力もある。高校3年のセンバツを前に、右手人さし指を骨折。土手に座り込んで泣いた。念願の甲子園も不完全燃焼。ケガはまっぴら。プロでは自分から痛いと言わなかった。「荒木が痛いと言ったら相当ヤバい」は歴代コーチ陣の共通認識。痛み止めの注射を打ち、錠剤で胃を痛めたことは何度もある。

 「頭より体を動かす選手。最後までがむしゃら。それは変えられない」。達成翌日もルーティンの二塁ノックを軽快にこなした。授かった強さと、不断の努力で、いまだ若手と同じように走り続けている。(おわり)【柏原誠、宮崎えり子】