真綿で首を絞めるような足技から、西武が巨人を泥沼の13連敗に突き落とした。今季最多の13得点で2度目の6連勝。貯金を最多の10とした辻監督は「連敗のチームと、連勝しているチームの勢いの差が出たように思います」と、静かに勝因を振り返った。

 勢いだけでない、したたかな走塁で主導権をつかんだ。1点リードの3回1死。二塁走者・源田と一塁走者・秋山が重盗を成功させた。指揮官は「一番のチャンス。クリーンアップの前でカウントを読みながら、早めに仕掛けてくれた」。足を導火線としての一気呵成(かせい)の攻撃。この回一挙6点を奪い、序盤で試合を決定付けた。

 準備と信頼に裏打ちされた攻め手だった。試合前に巨人先発・池田のフォームを徹底分析。源田は「リズムとかいろいろあります」とだけ話したが、確信を持って、自己判断でスタートを切った。この三盗に秋山が呼応した。今季、同様のシチュエーションではベンチから「(二走が)行ったらついていけ」の指示が出ている。俊足2人であれば併殺はまずない。たとえ三塁で刺されても、主軸の前で2死二塁の好機を残せる判断。4番浅村の打席でも、ベンチから三盗にストップをかけず、走らせた。

 辻監督は「選手がいろいろなことを考えて(重盗を)見事に成功させてくれた。失敗すればバカ野郎だけど、成功すればナイススチール。たとえ失敗しても、思い切りはなくしてはいけない」とうなずいた。チーム盗塁数はリーグトップの49。ルーキー源田の今季2つ目の三盗は、この積極方針にも支えられている。

 強調する“思い切り”は打撃にも表れた。初回2死一塁から連打で奪った先制点。浅村の右前打も栗山の適時打も決して会心の当たりではなかった。指揮官は「打者が振っているから安打になる。プレー全てで思い切りをなくしてはいけない」と力を込めた。確かに連勝中の勢いが、背中を押す側面もある。それでも「たとえ劣勢でもどんどんやっていきなさいと言っている」という。沈む巨人とは対照的な勝利への形。快勝の陰に、勢いの差だけではない、辻野球の確かな成果が見えた。【佐竹実】