5度目出場の立大(東京6大学)が、OBの巨人長嶋茂雄終身名誉監督(81)が観戦する前で、59年ぶり4度目の日本一に輝いた。「6番DH」の大東孝輔内野手(4年=長良)が、初回に今大会2号の特大3ランを放つなど2安打で優勝に貢献。リーグ戦では主に代打起用の「スーパーサブ」がMVPに輝いた。初の決勝に進出した国際武道大(千葉県)を9-2で破った。

 59年ぶりにこじ開けた扉の先に、絶景が待っていた。待ちこがれたファンの拍手。スタンドの貴賓席では、長嶋氏が母校のタオルマフラーを首にかけ、左手を振って祝福した。大東は憧れのミスターの前で3ランを放った。「小学生のころ、伝記を読んで憧れていた人。その人の前で打てたのは本当に奇跡。素晴らしいことだと思う」。控えめな男も興奮を隠せなかった。

 「スーパーサブ」がヒーローになった。守備は三塁が中心だが、ドラフト候補の笠松がレギュラーを張る。代打で貴重な一打を放つこともあったが、今春リーグ戦の先発は、笠松がケガでベンチを外れた2試合のみ。今大会は指名打者として全4試合で先発し「何としても結果を残したかった」。2回戦(富士大)では同点2ランを放ち、この日は初回に貴重な3ラン。打った後に、ミスターの存在を知って目を丸くした。

 大東が寝るベッドの天井には「悔しさを忘れない」と書かれた紙が貼ってある。昨秋リーグ戦の明大2回戦で先発出場した。しかし、チャンスで併殺に倒れ、目の前で優勝の胴上げを見た。「あの紙を毎日見て、誰よりもバットを振ろうと思った」。日本一へ貢献した一打には別の思いも込められていた。「上(社会人)で野球をやりたいんですが、まだ決まっていなくて。来ていただけたらうれしい」と“就活アピール”も忘れなかった。

 1年生右腕の中川は、3点リードの5回1死一、二塁で登場。度々ピンチでマウンドに上がり、12イニングを投げ防御率は0・00。2勝を挙げ最優秀投手賞に輝いた。「チームのテーマは戮力同心(りくりょくどうしん)。先輩をカバーできて良かった」。熊谷主将は、チャンスで点を取れなければ、必ず投手に頭を下げてから遊撃の守備についた。ミスターを始めとするOBも含め、全員で心をひとつにした59年ぶりのVだった。【和田美保】