フロックとは言わせない! これが実力だ。きらやか銀行(山形市)がTDK(にかほ市)を3-0で下し、2年連続2度目の都市対抗(7月14日開幕、東京ドーム)出場を決めた。先発したエース右腕小島康明(24=東農大)が9回7安打9奪三振で完封。今大会3戦に先発完投し、27回1失点と抜群の安定感を見せた。07年に1度クラブ化を経験したが、09年に企業チームへ復帰。昨年は都市対抗初出場で1勝を挙げるなど着実に力をつけ、今や東北を代表する強豪にまで成長を遂げた。

 最後は宝刀を抜くだけだった。9回2死、140球目に投げた118キロの決め球チェンジアップ。バットが空を切った瞬間、小島は両手でガッツポーズをつくり、仲間と抱き合って喜びを爆発させた。「2年連続で行かないと、自分たちの実力を見せつけられない。目標を達成できてよかった」。走者こそ許すも、勝負どころではシュート気味に沈む120キロ前後のチェンジアップを多投。手玉にとり、エースの貫禄を見せつけた。

 真の大黒柱に成長した。昨年のパナソニック(門真市)との都市対抗初戦は、勝利目前の9回途中で降板。「東京ドームで足りないものが分かった。先発するからには最後まで投げきるつもりで」。今年は常に完投するため下半身を強化。筋力トレーニングで82キロから85キロまで増量し「下半身が安定して疲れなくなった」。今季先発した公式戦9戦で6完投し、エースの重責を一手に背負う。

 そんな小島がマウンドに立つとチームが変わる。先発時は今大会の3勝(2完封)を加え目下6勝。大向誠監督(45)は「エースが抑えてくれるので、締まったゲームをしてくれる」と分析。この日、2打点で援護した6番建部翔太内野手(26=八戸大)は「小島が投げて負ける姿を見たくない。ウチのエースですから」と全幅の信頼を置く。試合後、胴上げされた小島は「去年はなかった。されるとは思わなかった」と喜んだ。チームと小島が完全に信頼で結ばれたからこそ、生まれた祝福の胴上げだった。

 昨年、小島は名前を上げたが、目標だったプロ入りはかなわなかった。「2次予選突破は通過点。東京ドームで活躍してなんぼ。上を目指してやっていく」。大会前に腰を痛めていたが、涼しい顔で投げるのがエース。信頼で結ばれた小島が投げ続ける限り、快進撃は続く。【高橋洋平】