価値ある執念ドローだ。広島が3点差を追いつき、延長12回の激闘の末に引き分けに持ち込んだ。今季34度目の2桁安打を放った好調打線の中で、5番松山竜平外野手(31)が反撃の適時打を含む猛打賞。9回新井貴浩内野手(40)の劇的同点打を呼び込んだ。つなぎの全員野球全開で2勝1分けでヤクルト3連戦をフィニッシュ。今日10日からはマツダスタジアムで前半戦最後のDeNA3連戦に臨む。

 投打につなぎの野球で追い付き、引き分けに持ち込んだ。9回新井の同点打は会心だったが、攻撃のつなぎの中心は、「旬な男」松山だった。2回の第1打席は、甘く入った真っすぐを捉えて左翼フェンスまで飛ばした。4回はスライダーを中前打。6回1死二塁では再びスライダーを右翼へはじき返し反撃のタイムリー。3方向へ打ち返すチャンスメークで、2試合ぶりの猛打賞だ。

 好調の理由は「結果を欲しがらなくなったこと」にある。開幕直後は不調で、結果を求める焦りが悪循環となった。負傷により5月2日に出場選手登録を抹消されたが、復帰打席できっかけをつかんだ。5月13日巨人戦。1回にマイコラスからの中前適時打に「これだ」とひらめいた。上体が突っ込まないように意識しながら早めに始動。1度上げた右足はL字を描くように踏み出すことで「間」が生まれた。登録抹消時に1割9分6厘だった打率は3割2分7厘まで上がった。

 投手もつないで勝ち越しを許さなかった。7回から大瀬良の後を受けた中継ぎ陣は1イニングずつバトンをつなぎ、走者を出しながら6イニングを1安打に抑えた。7回に登板し2者連続三振を含む3者凡退で中継ぎ陣の先陣を切った一岡は「みんな調子がいいので、それに乗り遅れないようにしたい」と振り返った。

 金曜日の移動ゲームから始まったヤクルト3連戦を2勝1分けで終えた。投手野手ともに1人を残す総力戦に、緒方監督は「負け試合の展開で負けなかった。いいプレーもたくさんあった。反省するところもあるにしろ、最後の最後まで全員で踏ん張った。地元に帰ってからの3連戦につながる、意味のある試合になった」と選手をたたえた。今日10日、また東京から広島へ移動して前半戦最後のDeNA3連戦が待っている。勝利を重ね、ガッチリ首位でターンする。【前原淳】