楽天岸孝之投手(32)が7回2失点と粘り、チームの勝利をたぐり寄せた。ロッテ13回戦(Koboパーク宮城)に先発し、初回、鈴木に2ランを浴びたが、2回以降は相手打線を3安打無失点。9勝目はお預けとなったが、役割を果たしてみせた。123球を投じた岸の粘投に打線も奮起。9回に阿部俊人内野手(28)のサヨナラ打で梨田昌孝監督の64歳の誕生日に花を添えた。チームの連敗も3で止まり、首位ソフトバンクにも1・5ゲーム差に迫った。

 梨田監督の64歳の誕生日を勝利で飾るために、岸の右腕はいつも以上に力がこもっていた。「監督の誕生日は昨日(3日)から頭に入っていた。チームも連敗中だったんで、勝った状態でマウンドを降りたかったけど、とりあえず勝ててよかった」。9勝目はならずとも、7回2失点と仕事を果たし、同監督を「さすが岸という、粘り強い投球をしてくれた」と喜ばせた。

 バッテリーとの共同作業で投球を軌道修正し、ロッテ打線の勢いを消した。初回は速球中心の配球で攻めたが、2死一塁から鈴木に2ラン。その後も相手打線に粘られ、3回まで55球を要した。だが、4回以降は「球数を減らしていければと、嶋と話して」と変化球主体の投球に切り替え、相手に的を絞らせなかった。岸を巧みにリードした嶋は「7回、8回まで投げてほしいと思っていた。もし、6回までで代わっていたら、試合はどうなるかわからなかった。本当によく投げてくれた」と、123球を投じた右腕をねぎらった。

 岸にとっても、不動の正捕手嶋の存在は心強い。「僕は西武時代から捕手に恵まれている。楽天で嶋と新しい関係を築けるのが楽しみ」と、開幕前から嶋とバッテリーを組むのを待ち焦がれていたほどだ。今季は8勝、リーグ2位の防御率2・18と、同い年の嶋との相性の良さを、マウンドで証明し続けている。

 岸の粘投に打線も奮起した。1-2の9回、1死満塁から聖沢の犠飛、阿部のサヨナラ打で劇的勝利を収め、連敗は3でストップ。孝行息子たちの躍動に、64歳となった梨田監督も「夢のよう。最高のプレゼントになった」と目尻を下げた。首位ソフトバンクとのゲーム差は1・5。挑戦者の意地を見せる。【田口元義】