リョウマ、あっぱれ救い投げだ。阪神先発の秋山拓巳投手(26)が3回途中、右太ももに張りを訴えて緊急降板。この大ピンチで急きょマウンドに上がった松田遼馬投手(23)が2回1/3を0封し、2戦連続完封勝利を導いた。今季2度の降格からはい上がり、救世主となった右腕は、プロ通算6勝目の白星ご褒美もゲット。秋山の今後は心配だが、窮地の虎が一丸で広島のマジック点灯を阻止した。

 松田の出番は突然やってきた。3回2死。先発秋山が坂口を四球で歩かせたところで、右太ももの張りを訴え、緊急降板。窮地を救ったのは23歳右腕だった。

 「(ブルペンで)何球か投げてから行きました。10球もないぐらいです。でもマウンドに行ったら、やることは変わらないので」

 漂った不穏なムードを強気の投球で断ち切った。まずは山崎を3球で右飛に打ち取り3アウトチェンジ。4回と5回も0を並べ、2回1/3を2安打に抑えた。昨年8月21日巨人戦(東京ドーム)以来のプロ6勝目。「自分のできることをしっかりやろうとマウンドに上がりました!」。お立ち台では福留とロジャースに挟まれて両手を上げ、喜びをかみしめた。

 夢のような時間を過ごせたのも、地道に汗を流したからだった。今季は開幕1軍だったが、不調で6月18日に2度目の降格。だがその月下旬の鳴尾浜では、横手投げでキャッチボールする姿があった。「力の抜き方というか、調整法の1つですね」。克服すべきはマウンドでの力み過ぎだった。福原育成コーチ相手に1球1球リラックス投球。試行錯誤の成果を緊急登板で発揮した。

 プロ6年目。登板109試合はすべて救援で、1軍で先発したことは1度もない。だが、2軍では先発にも取り組んだ。「自分のできることは何か。それを考えて投げるだけ」。長いイニングを任されても投げ切れるよう準備してきた。

 金本監督も「肩が一番早くできるから。香田コーチが松田と言ってくれた。途中から、いきなりでよく抑えてくれた」と絶賛した。「特に今日はリリーフがね」。松田の好投が呼び水となり、桑原、藤川、高橋、ドリスが無失点リレーを完結。秋山緊急降板のアクシデントを乗り越え、今季初の2試合連続完封勝ちで、3日の広島戦からの無失点を21イニングに伸ばした。

 お立ち台の最後、松田が力強く誓った。「僕も(勝利の方程式に)加われるように、明日からも抑えたいと思います!」。文字通りの救い投げ。でも、求める理想はもっと高い。【真柴健】

 ◆松田遼馬(まつだ・りょうま)1994年(平6)2月8日、長崎県生まれ。波佐見のエースとして3年春の甲子園で横浜戦に登板し、1失点完投勝利。11年ドラフト5位で阪神入り。13年の夏場に初の1軍入りを果たすと、中継ぎとして初登板から17試合連続無失点のデビューを飾った。184センチ、92キロ。右投げ右打ち。