阪神伊藤隼太外野手(28)が逆転の2号3ランをカッ飛ばした。1点を追う7回1死一、二塁、代打でバックスクリーンに運ぶ劇的弾。母校中京大中京の甲子園出場を励みにする11年ドラフト1位が、ここ一番で勝負強さを発揮した。金本知憲監督(49)も「しびれました」と絶賛。負ければ、首位広島にマジック点灯の可能性があったが、2日連続で自力V消滅を阻止した。

 とっておきの切り札が、一撃でツバメを仕留めた。1点を追う、7回1死一、二塁。代打伊藤隼が一振りで試合を決めた。「狙いというよりも気持ちで引かないように」。石山の3球目。外角低め147キロ直球を振り抜いた。バックスクリーンへの2号3ラン。「ホームランになってくれと願いながら走りました。興奮しちゃいましたね」。大歓声に包まれ、ダイヤモンドを1周した。

 11年ドラフト1位は6年目の今季、自らのバットで出番を勝ち取ってきた。「(代打で)いい場面で使ってもらえて、意気に感じている。準備でほとんど結果が決まってしまうと思うので、整理して打席に入っています」。代打成績は3割3分3厘。勝負強さの秘訣(ひけつ)は、打席での“間”にある。「待つタイミングは取れている。真っすぐでも変化球でも自分の間を作っていけている」。ゆったりと右足を上げて、「タメを作る」スタイルで結果を残してきた。

 甲子園に出場する母校の中京大中京が励みだ。同校はこの日大阪入り。部員は87人。そんな後輩たちにTシャツをプレゼントした。高校時代の監督で、現在は顧問の大藤敏行氏(55)は「(甲子園出場が)決まったときに、教え子の中で一番早くに連絡をくれた。律義でバカ正直。本当に良いやつ」と感謝した。

 殊勲の1発には金本監督も「まさかホームランとは…。しびれました。いいところでいい結果を出してくれている」と絶賛。チームは今季2度目の同一カード3連勝。5度目の4連勝で貯金を再び10に戻した。お立ち台の最後に真顔で言った。「まだまだどんどん勝って、上にいる広島を追っかけていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!」。この日も勝利で、首位広島のマジック点灯を阻止。残すは46試合。ミラクル逆転Vを諦めてはいない。【真柴健】