Vロードがはっきりと見えた。広島が中日16回戦(ナゴヤドーム)で投打に粘り強さを発揮して、今季4度目の引き分けに持ち込み、優勝へのマジックナンバー「33」をともした。マジック点灯日としては、80年と16年の8月24日を抜いて、球団史上最速。昨年よりも15試合早い点灯にも、緒方孝市監督(48)は泰然自若を貫いた。緒方カープは1歩1歩、優勝への道を進む。

 1点を争う展開でも、緒方監督はベンチの隅に腰かけ冷静にタクトを振った。打つべき手はすべて打ち、延長12回の末の引き分け。先発野村が粘りの投球で最少失点にしのぎ、菊池と丸が突破口を開いた。8回以降は中継ぎ陣が奮闘した。節目の試合で輝いたのは、同監督がチームの中心と認める選手たちだった。

 試合後は「(野村は)粘ってくれた。前半ヒットを打たれてピンチの連続の中で、終盤7回まで投げてくれた。その後を受けた中継ぎ陣も頑張った。野手陣もみんな頑張ってくれた」と、ねぎらった。今季4度目の引き分けで、優勝へのマジックナンバー33を点灯させた。

 就任3年目。緒方監督は負ければ「俺の責任」と言い、勝てば「選手たちがよくやってくれている」と言い続ける。ベンチの座り位置も選手が思い切ってプレーできる環境を意識する。「なるべく選手の視界に入らないところに。監督が視界に入ると気になるだろう」。あえて選手の視界から外れた。

 現役時代は「一匹おおかみ」で職人気質の選手が集まるチームで己を磨いてきた。今のチームカラーとは正反対。「個人的には物足りないところはあるよ。でも、それでいい。1つの色に染めようとは思わない。チームの色は毎年変わる。今年はタナキクマルの世代が中心。彼らが作る空気がチームの空気」。時代の流れ、チームの変化に合わせたチーム作りが、球団2度目の連覇を達成させようとしている。