阪神金本知憲監督(49)が、球団ワーストに並ぶ1イニング5与四球などで今季9敗目(4勝)を喫した岩貞祐太投手(25)を試合中に大阪へ強制送還した。岩貞は計6四球を与え、4回7安打6失点でKO。自身後半戦4連敗で、チームの連勝は4でストップした。自力Vの可能性が再び消滅し、ついに広島に優勝マジック33が点灯した。

 懸命に怒りを押し殺した表情、と表現したらいいだろうか。完敗から数分後、金本監督は「無」に近い能面のまま、自滅した先発岩貞について「見ての通りです」と2度繰り返した。4回を7安打6四球6失点で9敗目。次回について問われると、「もう抹消ですね」と即答した。

 期待値を考えれば、内容があまりに悪すぎた。1回は1番陽岱鋼にいきなり四球を与え、4番阿部に先制適時打を浴びる。2回は7番石川に右越えソロを献上。3回は1リーグ時代を含めて球団ワーストタイとなる1イニング5与四球と大荒れして4失点だ。最後は8番小林を敬遠四球で歩かせ、9番マイコラスに左前適時打を浴びる始末だった。

 前回1日広島戦でも初回に2四球が絡んで3失点し、4回4失点でKO負け。これで自身4連敗だ。指揮官は「中継ぎもできるだけ負担をかけたくないというのもあったし。1イニングでも多く、責任を持ってほしいしね」とも説明。この日は6連戦の初戦ということもあって4回も続投させたが、チームの連勝を4で止める背信投球にはさすがに堪忍袋の緒が切れた。

 試合後、球場を後にするナインの列に岩貞の姿はなかった。舞台裏では降板直後、指揮官が大阪への“強制送還”を即決。5回の攻防中には東京ドームを後にして、そのまま新幹線での帰阪を命じられたもようだ。試合中の“強制送還”は、少なくとも2年目を戦う金本阪神では初めて。長い歴史を振り返っても、超異例の出来事といえる。それだけ指揮官はまさかの大乱調にショックを受けたのだろう。

 ズッシリ重たい敗戦。3位DeNAとの3ゲーム差は変わらずも、4位巨人とのゲーム差は6に縮まった。首位広島が中日戦に引き分けたため、自力優勝の可能性が再消滅。ついにカープにマジック33の点灯を許した。9・5ゲーム差でコイの尾びれを追いかける状況。指揮官によるショック療法を、すぐさま白星につなげたい。【佐井陽介】

 ▼岩貞が3回に記録した5与四球は、球団ワーストタイ記録。阪神では近年、吉野誠が03年7月26日中日戦の6回にプロ野球最多タイの連続5四球を出した例がある。なおセ・リーグ最多は戸叶尚(横浜)が99年5月23日広島戦4回に記録した6与四球。プロ野球ワーストは、田村満(高橋=パ・リーグ)54年6月12日西鉄戦8回の7与四球。

 ▼阪神は今季自力優勝の可能性が再び消滅した。広島は阪神戦残り8試合に全敗しても、他球団との33試合に全勝すれば、最終成績は96勝43敗4分けで勝率6割9分1厘。阪神は残り45試合に全勝しても、98勝44敗1分けで6割9分に終わり、広島を下回る。これで広島には優勝マジック33が点灯した。