よくも悪くも「中谷劇場」-。阪神中谷将大外野手(24)が、チームで4安打しか打てなかった巨人マイコラスからマルチ安打を記録し、チャンスメークに貢献。一方で2回1死一、二塁の二塁走者として大和の左飛で飛び出し、帰塁できずアウトになった。勢いをそぐ走塁ミスに、高代ヘッドコーチは「あかんよ、そりゃ」。金本監督には「次は絶対にないように」とクギを刺された。

 天敵撃ちで気を吐いた。今季4戦3敗の強敵マイコラスの前にチームは4安打に終わった。そんな中、中谷は1人で2安打。今季15度目のマルチ安打を記録してみせた。2回に左翼フェンス直撃のヒットを放つと、4回1死二塁では思い切って初球をスイング。三遊間へボテボテの打球になるも、懸命に駆け抜け内野安打を勝ち取った。試合後、報道陣から打席内容がよかったかと問われると「そうですね、はい」と言葉少な。表情が硬かったが、視線は前を向いていた。

 敗戦にも金本監督は売り出し中の24歳をたたえた。「その中でも中谷が2本打ったり。今マイコラスは絶好調やね。なかなかちょっと打てる投手ではない。欲を言えばマイコラスから1点を取ってほしかったけど」。宿敵からは無得点。得点が遠い。その1点が取れそうだった好機をつぶしてしまったのも、中谷だったのは皮肉だ。

 2回1死、チーム初安打で出塁すると、鳥谷が三失で続き一、二塁のチャンス。ここで7番大和がライナー性の左飛を放つ。これに、二塁走者の中谷が飛び出してしまった。慌ててバックして、必死に足からスライディングするも、ダブルプレー。一瞬にして好機を逸した。

 このシーンに高代ヘッドコーチは無念の表情だった。「あかんよ、そりゃ。3回に(指示で)言ってたんや。外野が前に来てるからライナーは気をつけろ、と」。前のめりな姿勢が生んだミス。これには指揮官は「気がはやったのか、焦ったっていうか…。それも経験して次は絶対にないようにしないと。勉強ですから」とかばった。

 成長著しい若虎だが、失敗することもある。ミスしても前を向くしかない。自らのバットで取り返せる力をつけるだけだ。【真柴健】