頼れる40歳のキャプテンだ! 阪神福留孝介外野手が打って、走って、走って逆転勝ちを呼び込んだ。敗戦寸前の9回に同点打を放ち三塁まで激走。続くロジャースの初球、浅い左犠飛でも激走して決勝ホームに転がり込んだ。1点ビハインドから、バットと足で2球で試合をひっくり返した。敗れた広島の優勝マジックを消滅させ、再び自力Vが復活。長打3本の主将が伝統の一戦で猛虎をよみがえらせた。

 体ごと本塁になだれ込み、左手でベースをたたいた。白熱した伝統の一戦は、40歳福留による魂の激走でエンディングを迎えた。4-4に追いついた9回1死三塁。三塁走者の福留は、4番ロジャースの浅い左飛で、本塁に突っ込んだ。

 「最初にスタートを切った瞬間から、三塁打の影響で足がもつれた(笑い)」

 間一髪、勝ち越し決勝の1点をもぎ取ると、疲れ果てたようにその場で正座。動けない。すると、大はしゃぎのロジャースが一塁方向から飛んできて抱擁。肩を組んで喜んだ。

 すでに息は上がっていた。その1球前、同点の三塁打も大激走だった。1点ビハインドの1死から代打伊藤隼が中前打。ここで福留がカミネロの内角スライダーをとらえた。「詰まったけどいいところに落ちてくれた」。打球が右中間に弾むと鬼の形相で三塁へ激走。この日は全5打席出塁で、1回に右翼線二塁打、3回に左翼線二塁打と走りっぱなしだった。東京ドームの今季打率は5割で相性の良さも発揮した。

 「神走塁返し」だ。2点リードの7回。2死満塁から登板したマテオがマギーに痛打され、左中間を破られた。一塁走者陽岱鋼も、リプレー検証の結果、梅野のタッチより一瞬早く手がホームをはたいてセーフ。痛恨の逆転を許していた。

 敗戦寸前、不惑の大激走が試合をひっくり返した。ジェットコースターのような激闘に、金本監督も「何か興奮してますね。わたくしも」と熱が収まらない。「いや~、でもヘバッとったで。ヘロヘロやったで」とうれしくてたまらない。今日10日はご褒美の休養日を与える考えを明かした。

 「これだけ暑い中で走ってたら頭がおかしくなるわ!」。炎天下の甲子園でも練習前には外野のポール間を黙々と往復。40歳になっても変わることがない日課だ。走攻守。どれもおろそかにすることはない。黄色に染まった左翼スタンドを見渡し、力強く言った。

 「これだけ声援をもらって恥ずかしいプレーはできない。今日の試合みたいに、全然諦めてないですよ」

 これで前日8日に点灯した広島のマジックも消滅。阪神の自力Vが再び復活した。セ界の火を消すわけにはいかない。【桝井聡】

 ▼阪神が巨人に勝ち、広島が中日に敗れたため、広島のマジックが消え、阪神の自力優勝が復活した。広島が阪神との残り8試合に全敗し、阪神以外のカードに全勝すると95勝44敗4分けの勝率6割8分3厘。阪神は残り44試合に全勝すると98勝44敗1分けで勝率6割9分となり、広島が上回れないため。阪神の自力優勝が復活するのは、4日に続き2度目。