13号決勝ソロの1球前。カーブを見逃したときに、広島菊池の感覚スイッチが入った。「いい見逃し方が出来た。いい感覚のまま速球系に絞って、思い切り行った」。カウント3-1からの5球目。真ん中高めのカットボールを振り抜くと、打球は左翼スタンドを軽々と越えた。

 シーズン中でも「あまりない」と言う感覚。ベンチにいた新井にも「いい見逃し方だったね」と声を掛けられたことも、うれしそうに明かした。「打ちに行くなかで止まる」独特の感覚。五感を研ぎ澄ませる菊池に感覚が宿れば無敵だ。早くも昨季に並ぶ自己最多の13号で試合を決めた。

 今季はコンディション不良による欠場もあり、お立ち台では「チームに迷惑を掛けているので、最高ですとは言いづらい」と正直に語った。体の状態は「悪いわけではない」と言うが、布団に入っても眠れない日も多く、数時間の睡眠で試合に臨む日もあるほど。心身をすり減らして戦い、25に減った優勝へのマジック。「絶対に優勝します!」と叫んだ目標に向かう。「最高です!」を叫ぶのは、まだ先だ。【池本泰尚】