巨人の先発陣に、若き4本目の柱が誕生した。ドラフト2位ルーキーの畠世周投手(23)が、阪神打線を7回1安打無失点に封じて4勝目を挙げた。最速152キロの直球を軸に、緩急自在の戦略的投球で自己最多タイの11奪三振を記録。初対決となった近大の先輩、糸井からも2三振を奪った。同学年の藤浪との投げ合いに勝利し、自身3連勝でチームを再び勝率5割に押し上げた。

 あどけない表情で、したたかに戦略を完遂した。6回2死一、三塁。畠が2本指で挟んだボールを鋭く振り抜いた。135キロフォークで伊藤隼を空振り三振。「今日あまり使っていなかった球種。チェンジアップではなく、直球に近いスピード感を小林さんが考えてくれたと思います」。あえて使用頻度の低いボールを選び、ピンチを脱出。ベンチに引き揚げる途中で小林から差し出された右手を、満面の笑みで握り返した。

 150キロ前後の直球と、チェンジアップなどで11三振を奪った。「相手に自分のスイングをさせないようにしています」。最速155キロの直球を最大の持ち味と自任しながら、それだけに頼らない柔軟性がある。

 「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」。入寮時に持参した兵法書「孫子の兵法」には、戦の極意が記してあった。敵の実力と戦略を見極め、自分の能力を客観的に判断すれば危機に陥ることはない。打者を抑えるために最も大切なことは「タイミングです」と信念がある。初めて覚えた変化球はチェンジアップだった。敵を知り、相手の裏を読めば、強打の阪神打線も恐れる必要はなかった。

 186センチの長身ながら、右手の手首~中指先端の長さは約19・5センチと、日本人青年男性の標準18・5センチと大差がない。「腕も身長の割に短いんです。だから腕をコンパクトに、体を使って振ることを意識しています」。己を知り、力を出し切る方法を知っている。

 プロ入り後では一番といえた快投は、心待ちにしていた近大の先輩、糸井との初対決から始まった。初回の先頭から対戦し「きたー! って思いました。いきなりでしたし、体も大きくて」。ひるまず腕を振り、3者三振の絶好スタートで自らもチームも流れに乗せた。菅野、マイコラス、田口に次ぐ4人目の先発の柱に浮上。若い力でチームを押し上げる。【松本岳志】

 ◆畠世周(はたけ・せいしゅう)1994年(平6)5月31日、広島・呉市生まれ。川尻中では軟式野球部。近大広島高福山-近大を経て16年ドラフト2位で巨人入団。名前の由来は、父英彰さんが「世の中が自分のいい方に周るように」と命名。186センチ、78キロ。右投げ左打ち。

 ◆孫子の兵法 紀元前500年ごろの中国春秋時代に、呉の将軍の孫武が書いた兵法書。兵法の総論といえるもので、以後13編で語られる思想の根本になるものとされている。不要な戦いを避けること、主導権を握ること、細部にわたる観察と臨機応変な対応を行うこと、周到な準備で勝率を上げることなどが説かれている。

 <関係者のコメント>

 ▼巨人高橋監督(畠について)「ピンチもあった中で粘り強くいい投球をしてくれた。とにかく日々成長してほしいと思います」。

 ▼巨人斎藤投手コーチ(畠について)「先発4本柱? そういう感じになってきた。今の4人は欠かせないので残り試合で中心になってほしい」。