あふれ出る感情を抑えることは出来なかった。楽天のエース則本昂大投手(26)が、泣き崩れた。マウンド上に膝から崩れ落ち、頭を抱えた。ベンチに戻ると、タオルで顔を隠した。与田投手コーチから「野球は続く。今シーズンも続く」と声を掛けられ福山や松井裕らに肩をたたかれても、しばらく動くことが出来なかった。

 則本 勝ちたかった。昨日夜、決起集会が行われてもう1回、というところで。0点で帰ってきたかった。

 誰がこんな姿を予想しただろう。0-0で迎えた9回。2死二塁から柳田を敬遠し、デスパイネへの初球だった。ど真ん中へ投じた144キロ直球は、ライナー性でセンター方向に飛んだ。中堅の島内がダイビングキャッチを試みたが、ボールは無情にもグラブからこぼれ落ちた。8回まで完璧といえる内容。4者連続奪三振をマークするなど、散発3安打に封じていた。快投から一転。則本は「残念な1球でした」。最後の最後に、悲劇は待っていた。

 まさかだった。打線も4安打無得点と完全に沈黙し、エースを援護することが出来なかった。梨田監督は思わず「則本は素晴らしい投球だった。見殺しにしてしまった。かわいそうなことをした」と言った。これで引き分けを挟み、05年の球団創設年以来となる3度目の10連敗となった。梨田監督は「打開策があるなら教えてほしい」と顔をしかめた。明日5日は富山で日本ハム戦。まずは1勝。全員でつかみ取る。【栗田尚樹】

 ▼楽天が8月23日ロッテ戦から1分けを挟んで10連敗。楽天の2桁連敗は球団1年目の05年4月と8月に11連敗して以来3度目だ。今季は大型連敗が目立ち、これで2桁連敗は日本ハムが4月に10連敗、巨人が5~6月に13連敗、ヤクルトが5~6月に10連敗と7月に14連敗して以来4球団、5度目。両リーグで2桁連敗が5度は61年(近鉄3度、阪急、大洋)以来、56年ぶり。4球団が2桁連敗を記録したのは、50年に広島2度、国鉄2度、西日本、阪急と、4球団で6度記録して以来、67年ぶりの珍しいケースとなった。