中日小笠原慎之介(19)には甲子園のマウンドが似合う。粘って6回2失点で4勝目。「あまり制球がよくなかったですが、悪いなりに何とか踏ん張ることができた。武山さんには感謝しかないです」。東海大相模で2年前の夏の甲子園を制した。プロでは昨年2軍戦で1度投げ、1軍ではこの日が初。公式戦で黒星知らずの相性を見せつけた。

 強い直球を見せてからチェンジアップ。その逆もあり。6回同点にされ、なお2死満塁の大ピンチを迎えたが、前の打席で直球を柵越えされている上本に同じ直球を投げ込み、力で中飛にしとめた。前回の広島戦。「ラストチャンス」と原点に帰って、無心で腕を振った。球威を生かす投球で約2カ月ぶりの白星。その投球を今回も続けられた。

 自在に操ったのは捕手の武山だ。「慎之介は世話のかかるヤツなんですよ」と試合中もこと細かに戦略をたたき込む。かつてDeNAファンだった小笠原にとって、08年から4シーズン横浜にいた武山はテレビの中の選手。信頼を置き、Tシャツをもらって愛用するほど慕っている。19歳は決勝打の先輩に最敬礼した。

 甲子園は自分を成長させてくれた場所だ。2年前の決勝で投げ合った仙台育英・佐藤世那(現オリックス)が計680球を投げ抜いた姿が鮮烈だった。大会後のU18W杯でも不振の自分に代わり、佐藤は大車輪の活躍。真のエース像を見た思いがした。

 「甲子園優勝投手」の肩書きを背負ってプロ入りした小笠原。2年目は苦しい日々だったが、久しぶりの甲子園で見せた雄姿が、あらためて高いポテンシャルを示していた。【柏原誠】