さらなる進化を遂げた。西武菊池雄星投手(26)がロッテ22回戦(メットライフドーム)で自己最速タイで左腕最速記録の158キロをマーク。9回4安打10奪三振の快投で今季4度目の完封勝ちを決めた。ハーラートップタイの14勝目で、防御率、奪三振、完封数の投手4部門でトップ。2段モーションによる反則投球判定から新フォームに変更し2戦連続の完投勝利。頼れる男がワンランクアップの力強さを堂々と示した。

 狙ってたたき出した。7回1死走者なしで迎えたペーニャへの2球目。菊池はこれまでより右尻をグッと前に出し、左肩を下げて思い切り腕を振った。跳ね上がる左足。「点差もあったのでやろうと決めていた。(球速を)出そうと思って出せた。その感覚をつかめたことも収穫です」。外角高めで空を切らせた球速は、自己最速タイの158キロをマークした。

 2段モーションによる反則投球判定の原因となった右足を上げた後にもう1度上げる動作をなくした新フォーム。前回8月31日楽天戦は11奪三振で完投勝利したが、まだなじみきっていないため、左肩の下がりは浅かった。「もともと出来ていたことですが、前回は余裕がなかった」。感覚をつかむことに専心した1週間。「過去の球を追い求めると、どうしても苦しくてイライラしてしまう。今の形で100%、ベストを出そう」と覚悟を固め、結果を出した。

 進化の中でも、体に染み込んだフィニッシュは変わらなかった。左足の跳ね上がりは調子のバロメーター。中学1年生の頃から自然と出ていたという。コント55号の「なんでそうなるの?」をほうふつとさせるポーズに「恥ずかしいんですけどね…」と明かしながらも「しっかり体重がボールに乗っている証拠でもあるんです」。球威、制球力を支えるのは乱れのないフォーム。2段モーションという壁を乗り越えた手応えは、158キロの投げ終わりに、確かに刻まれていた。

 直球と「自信のある」切れ味抜群のスライダーで2戦連続の2ケタ奪三振。球団の左腕では工藤公康以来となるシーズン4完封も決めた。まだ立ち上がりから納得のいく投球は出来ていない。それでも「今日は6回くらいから(フォームが)はまった。今年はそれでいい。それで勝つのが、ここからのテーマです」とうなずいた。

 次回登板は14日の3位楽天戦。クライマックス・シリーズのマウンドも、もちろん視野に入る。「まだまだ精度を高めて、1試合でも多く投げられるように頑張ります」と誓った左腕。苦い経験を成長への確かな糧にし、さらなる高みを目指す。【佐竹実】

 ▼菊池が14勝目を挙げ東浜(ソフトバンク)に並ぶハーラートップタイ。奪三振も則本(楽天)を抜いてリーグトップに立った。このまま勝利、防御率、奪三振の3部門トップなら西武では西鉄時代の稲尾(58、61年)以来2人目となるがどうか。3部門に加え4完封が1位で、勝率も現時点で2位。06年斉藤(ソフトバンク)以来8人目、左腕では史上初めて投手5冠になる可能性もある。

 ▼菊池は今季9度目の2桁奪三振。西武では03、06年松坂がマークした球団最多のシーズン10度へあと1に迫った。