天国のおじいちゃんへささぐ一打だ。日本ハムのドラフト9位ルーキー今井順之助内野手(19)が、プロ初打席の初スイングで初安打&初打点をマークした。5日の西武25回戦(メットライフドーム)の1回1死満塁で、西武ウルフの初球を中前にはじき返しプロ初出場&初先発を飾った。6月に祖父が逝去。今季中の初安打を誓っていた高卒新人が、見事にチャンスを生かし、思いを亡き祖父に届けた。チームは8-6で勝ち3連勝。

 秘めた強い思いを乗せた打球は力強かった。2点先制後の1回1死満塁。今井は決めていた。「ファーストストライクを打ちにいくのがスタイルなので」と初球を迷わず、振った。バットは、折れた。詰まったはずの打球は、二遊間を抜けて中前に弾んだ。プロ最初のスイングで初安打初打点となる中前適時打。「やったぁ」と感慨に浸った。そして、感謝した。「バットが折れたけど、センターまで飛んでくれた。おじいちゃんが、どこかで見ていてくれたからだと思う」。

 6月、球団の許可を得て、故郷の岐阜・多治見に帰省した。祖父が危篤だった。「野球を始めた頃から道具を買ってくれたりして…」。夏の最高気温は40・9度を記録したこともある猛暑の地元で、野球に打ち込む自分を応援し、支えてくれた。いろんな思い出が去来しながら、家路を急いだ。到着すると、祖父はまだ息をしていたという。「最期は、みとることが出来ました」。

 悲しい別れを、野球に打ち込む原動力に変えた。「今シーズン中に、1本打ちたい」。天国へ旅立った祖父へささげる、1軍での安打をプロ1年目の大目標に据えた。イースタン・リーグではチームトップの110試合に出場した。祖父や、阪急で内野手だった父茂さんらから受け継いだ強い体で、大きな故障もなく2軍戦を戦い抜いた。だからこそ、訪れた1軍の舞台で、強く誓った1本を放ってみせた。

 デビュー戦は8回裏に交代するまで4打数1安打1打点。ストライクゾーンのボールは、積極的に振って度胸の良さもアピールした。栗山監督も「振れるのが良い。すばらしいですね。バッターの資質。しっかり振れるのは」と、素材の良さを認めた。ドラフト9位の高卒新人は、最高の経験を積み、最高の結果を残して、2年目へ向かう。また、楽しみな若者が、日本ハムに現れた。【木下大輔】