クライマックスシリーズ(CS)先発へ及第点だ。楽天のドラフト1位ルーキー藤平尚真投手(19)が今季最終登板となるオリックス戦に先発。6回を散発2安打で無失点にまとめ、3勝目を挙げた。好印象でデビューイヤーを締め、CSファイナルステージに進出した場合の先発枠入りが濃厚になった。過去に高卒ルーキーでCSの勝利投手はおらず、一番乗りへ大きく前進した。

 19歳は落ち着いていた。2点の援護をもらった直後の6回裏、三塁正面の打球をウィーラーがトンネルした。藤平は気合を入れた。「僕は監督やコーチに使ってもらう側。安心感を与える投球をしないと、CSや来季マウンドに送り出してもらえない」。迎えるはオリックスの中軸。吉田正に外角ストレートで空を切らせると、4番小谷野、5番中島も力でねじ伏せた。

 「2度同じ失敗はできない。前回の反省を踏まえて、対応できたと思います」。9月29日の日本ハム戦、札幌ドームの硬いマウンドに順応できず、リリースポイントを乱した。結果5四死球を出し、自己最短の3回で交代した。この日の京セラドーム大阪も初登板。硬さと傾斜に対応すべく、平地でのキャッチボールを減らした。中7日の間に4度ブルペンに入り、入念にバランスを確認してきた。気をつけた初回。空振り三振から入り、11球で3者凡退に仕留めた。

 チームは既に3位でのCS進出を決めている。だが藤平は「自分にとっては消化試合はない」と言った。則本、岸、美馬は先発当確。ファイナルステージまで勝ち進んだ場合の当落上にいた。内角攻めとカーブを有効に使っての6回0封締め。梨田監督は「順調に来た。これならCSでどっかで投げさせてもいいかな」とテストに“合格点”を与えた。

 悔し涙はもういらない。9月13日の本拠地西武戦で逆転3ランを浴びた後、ベンチで泣きはらした右腕に森山投手コーチが声を掛けた。「涙は次の大事な時まで取っておけ」。過去に高卒新人でCSで先発したのは12年ソフトバンク武田、13年阪神藤浪の2人のみ。いずれも勝利はしていない。「泣いてる場合じゃない。チームはCSを決めて、日本一を目指して頑張っている」。3位からの逆転日本一。高卒新人初のCS勝利でそこに貢献し、次は歓喜の涙を流す。【鎌田良美】

 ▼CSで先発した高卒新人は12年1S<2>戦武田(ソフトバンク)と13年1S<1>戦藤浪(阪神)の2人だけ。武田は5失点、藤浪は4失点で2人とも敗戦投手だった。日本シリーズを含むポストシーズンを見ても、高卒新人の先発は過去7人(8度)だけで、そのうち白星を挙げたのは56年日本シリーズ<6>戦の稲尾(西鉄)しかいない。