阪神の安藤優也投手(39)と新井良太内野手(34)が、引退試合となった今季最終戦(甲子園)で絶妙のコンビネーションを見せた。8回に登板した安藤が三遊間へ痛烈なゴロを打たれたが、これを新井が飛びつき、最後の1アウトをプレゼントした。

 新井は最後、甲子園の中心から四方に頭を下げた。控えめに、丁寧に。安藤の引退セレモニーが終了した直後、福留らに促される形で感謝の気持ちを伝えた。今季限りでの現役引退を決断し、プロ12年間で最後の試合。とはいえ、まだ球団から正式発表はない状況。セレモニー中には安藤の後に5回胴上げもされ「安藤さんのための引退試合なので申し訳なかったですけど…」と恐縮した。

 両親らも球場に駆けつける中、6回無死で代打登場。福谷を相手に代名詞のフルスイングで体勢を崩し、左翼ポール際へ大ファウルも放った。直球8球勝負で遊ゴロに倒れ、8回の現役最終打席は左飛。それでも三塁守備では8回に三遊間への痛烈なゴロに飛びつき、安藤に現役最後の1アウトをプレゼントした。

 9月中旬。3カ月も1軍から声がかからない中、良太はポツリとつぶやいた。「このままなら上に上がれないとか、頭でいろいろ計算している時点でダメよな…」。来年、居場所はないかもしれない-。そう冷静に分析する自分を責めていたころにはもう、引き際を悟っていたのかもしれない。

 ずっと復活を待ってくれていたファンには感謝しかない。「たまにしか出ないのに、甲子園には『32番』をつけた人があんなにいてくれるんだもんな…」。この日は両目が光ったようにも見えたが、「そんなことないよ」と多くは語らず。今日11日に引退会見。最後はあふれる思いを、全力で言葉にする。【佐井陽介】

 ◆新井良太(あらい・りょうた)1983年(昭58)8月16日、広島市生まれ。広陵2年春と3年春に甲子園出場。駒大を経て、05年大学・社会人ドラフト4巡目で中日に入団。10年オフ、水田圭介との交換トレードで阪神移籍。12年8月9日巨人戦で、阪神第93代の先発4番(以後計54試合)。188センチ、99キロ。右投げ右打ち。