<酒井俊作記者の旬なハナシ!>

 15年近くプロ野球一筋で取材してきたなかで、たった1度、早実・清宮幸太郎と話したことがある。4年前だから、まだ中学2年生だった。あどけなさを残しつつ、自分の言葉で理路整然と話していたのが印象的だ。当時の取材ノートを見る。「13・12・15 調布」。阪神掛布DCがスーパー中学生を訪問。その同行取材だ。そこには前途洋々な言葉を書き連ねていた。

 -掛布さんが来た

 清宮 僕も阪神ファンです。生まれる前に活躍していた方です。全盛期は知らないですけど、野球をやっている人は全員知っている偉大な人。見てくださって自分にとって財産です。

 -目標はありますか

 清宮 松井さんや、メジャーだとAロッドが好きです。松井さんだけ飛距離が違います。ああいう選手になりたいと思っています。

 「松井さん」とは大リーグで活躍した松井秀喜だ。調布シニアでプレーする時から無双のスラッガーを目指していた。ビッグマウスではない。虎番たちも口をあんぐり。それほど目の前で見た弾道はすさまじい。金属バットだが、簡単に右翼上空の防球ネットを揺らした。興味深いのは近くで見ていた掛布の清宮評だ。

 「肘が体から離れない。バットが巻きついている。柔らかくて力強い。両面、持ち合わせているよね。このまま育てばドラフトで競合するんじゃないのかな」

 非凡さを表すフレーズがある。「バットが巻きついている」。シート打撃の中前打を見て感じたという。「金属だと普通はバットが体から離れるのが早い。木でも対応できる打ち方をしてるんだよね」。反発力が強い金属バットは、バットそのものの材質に頼って遠くに飛ばせる。だが、木製バットは理にかなった打ち方でなければ力は伝わらず好打は生まれない。将来を予感させる見立てだろう。

 4年前の出来事なのに、いまなお、みずみずしさを失っていない。力強く歩んでいる証しだ。そういえば、掛布は当時、清宮をこう例えていた。「富士山みたいなものだよ。(まだ中学生だが、他球団には存在を)隠せない」。刻一刻とドラフトが迫る。超目玉は阪神と赤い糸で結ばれるのか、果たして…。(敬称略)