広島田中広輔内野手(28)が2日、秋季練習2日目に志願の居残り特打を行った。今年はWBCにも出場し、シーズンでは広島の遊撃手では球団初の2年連続フルイニング出場を記録。2つのタイトルを獲得するなど、リーグ連覇に貢献した。疲れた体にもう1度ムチを打ち、鍛え直す。来季への戦いはすでに始まっている。

 ヘルメットを脱ぎ捨て、田中はバットを握った。チームから与えられた全メニューを終えた午後2時過ぎ。三塁側ベンチ前で照りつける日差しを浴びながら、1週間の休養のブランクを振り払うようにバットを振った。迎打撃コーチのトスに、体を大きく使うことを意識しながらロングティーで汗を飛ばした。

 練習を再開して、まだ2日目。フェニックス・リーグ明けで体の切れのある若手とは違い、主力選手は7日のキャンプインへ向け、感覚を呼び起こす段階だ。だが「もう1度詰めながら練習できる。この時期は形ではなく、力強く振る、数多くボールを追いかける、ということができる。しっかりやりたい」と汗を拭った。WBCから始まったシーズンで2年連続フルイニング出場を記録しても、歩みを止めるつもりはない。

 今季は打率2割9分、8本塁打、60打点の好成績を残した。出塁率3割9分8厘、35盗塁でタイトル受賞。トップバッターとして強力打線をけん引し、リーグ連覇に大きく貢献した。それでも「いろんな課題も出ましたし、まずはキャンプでおさらいしながらやっていきたい」と表情を引き締める。

 休養期間中にはうれしいニュースもあった。弟俊太がドラフト5位で巨人に指名された。直後に電話で祝福した。東海大から指名を待った2年前も気にかけていた弟思い。「もちろん、楽しみな部分もありますし、弟もその場(1軍)でプレーできればいいだろうし、頑張ってほしい。まずはその場に来てほしい。チャンスはあると思う」。優しい表情でエールを送った。

 広島の遊撃手では初の2年連続フルイニング出場も通過点に過ぎない。「今から動かないようにしようと思えばできるんですけど、僕は動いていた方がいい。ケガをしない体もできると思う」。秋も走り続ける。【前原淳】