稲葉ジャパンの初陣で、衝撃の“アグー弾”が飛び出した。「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」(16~19日、東京ドーム)に向けて強化合宿中の侍ジャパンは12日、宮崎市で日本ハムと練習試合を行った。1点を追う5回、4番の西武山川穂高内野手(25)がスコアボードを越える推定140メートルの特大同点ソロを放った。2盗塁を含む積極的な走塁も仕掛けて「機動力+パワー」をアピール。試合は特別ルールにより9回裏は行われず、3-3で引き分けた。

 山川の特大弾に球場がざわめいた。1点を追う5回1死走者なし。カウント2-2から外角高め146キロの直球をたたいた。「三振したくなかったので、なんとか食らいついた」。木の乾いた音を残し、打球は右中間へぐんぐん伸びる。中堅122メートルのバックスクリーン横に設置された高さ約10メートルのスコアボード上部を直撃すると、ボールはボード奥の森へ消えていった。

 開幕戦で対戦する韓国代表のスコアラー4人が視察に訪れる中、稲葉ジャパン第1号となる推定140メートルの1発。稲葉監督は「際どいところを見極めて、追い込まれながらも捉えるのはさすが」と舌を巻いた。

 出身地の沖縄固有の豚にちなんだ「アグー」が愛称の大砲は自然体を崩さない。「今日は全打席本塁打を狙った。当てに行くことだけは絶対にしたくない」。オーバーエージ枠で選出され、初日に稲葉監督から直接「4番」を言い渡された。「責任は感じる」と日の丸の重圧はあるが、「自分のやるべきことをやるだけ」と、第1打席から持ち味のフルスイングを貫いた。

 期待に「1発回答」しても謙虚さを忘れない。同点の7回1死二塁の好機で空振り三振に倒れると「チャンスをものにしないといけない」と反省。合宿中の守備練習でのエラーを後輩に「ヘイヘイ!」「先輩しっかり!」といじられても「これが僕のキャラなので」と笑顔を絶やさない若侍の4番は「1試合ずつ成長していきたい」と表情を引き締めた。【桑原幹久】