20年東京五輪のエース候補が誕生だ。18日の「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の予選リーグ最終戦の台湾戦で、DeNAの2年目左腕、今永昇太投手(24)が衝撃の侍デビューを飾った。台湾プロ野球で2年連続打率4割の4番王柏融ら強力打線に対し、6回106球を投げて3安打無失点で12三振を奪った。日本は初戦の韓国戦からスタメン3人を入れ替えた打線もつながって8-2で快勝。2連勝の1位で決勝進出を決め、今日19日の決勝で1勝1敗で2位通過となった韓国と対戦する。

 日の丸の重みが、そのままボールに乗り移った。今永が驚異の12奪三振で、6回3安打無失点の侍デビュー。106球を「納得がいく球を初回から投げられた。だからガス欠になってもいいという気持ちで、1人1人に投げていった。三振は腕を振った結果」と振り返った通り、初回からエンジン全開だった。1回先頭を直球で空振り三振に仕留めると、2回までアウト6つすべて三振。4回には、先頭の巨人陽岱鋼を打ち取った内野フライを、味方がお見合いして不運な安打に。続く4番王を打ち取りながらも一塁が失策し、無死一、三塁のピンチを招いたが「ピンチは味方の信頼を得るチャンス」と本領を発揮した。直球高めのつり球と低めのスライダーを使い分け、3者連続空振り三振。外野へ飛んだ安打は1つだけ。打高投低で攻撃力が自慢の台湾打線をねじ伏せ、東京五輪の先発候補に名乗りを上げた。

 1年前だった。所属するDeNAの本拠地・横浜スタジアムが、東京五輪野球・ソフトボール競技のメイン会場に決まった。ルーキーイヤーを8勝9敗で終え、初めて契約更改した昨年12月8日に吉報が入った。脂の乗った26歳で迎えるホームでの五輪を「野球選手である以上目指したい。口にできる立場ではないが、口に出すことで気持ちは高まる。常に思い描きたい」と願った。駒大4年で代表選出されたが左肩を痛め辞退。初代表にして、初の国際大会で躍動した。

 プロ2年目で11勝を挙げ、来季セ・リーグ制覇を狙うDeNAのエース候補になった。日本シリーズの熱戦からちょうど2週間。完全休養は1日だけ。合流した代表に、2試合先発した日本シリーズでも導入していた“秘密兵器”を持ち込んだ。約1キロの重みのあるグリーンボールで、試合中もストレッチや肩関節の確認に使用。ダルビッシュ以来となる同シリーズ2戦連続2桁奪三振を果たしていた勢いを、代表にももたらした。五輪まで残り約2年半。「しっかりと腕を振ること。これを投球の第1項目としてやっていきたい」。横浜の星が、日本の星となって輝く。【栗田成芳】

 ◆国際大会の2桁奪三振 最近では15年プレミア12で大谷(日本ハム)が1次ラウンドの韓国戦で6回10奪三振、準決勝の韓国戦で7回11奪三振と2度記録。投球数制限があるWBCで2桁奪三振の投手はおらず、08年北京五輪では和田(ソフトバンク)が韓国戦、成瀬(ロッテ)がカナダ戦で10奪三振をマーク。松坂(西武)は予選を含めシドニー、アテネの両五輪で5度記録し、アテネ五輪準決勝のオーストラリア戦では7回2/3で13三振を奪った。