大学球界を、剛腕ニューヒーローが席巻した。この秋、将来のドラフト候補と話題をさらったのが、今秋のリーグ優勝に導いた慶大(東京6大学)の最速148キロ腕佐藤宏樹(1年=大館鳳鳴)だ。高校時代を東北の地で過ごした。在学中の甲子園出場はかなわなかったが、現在、大学では急成長を遂げ、エース級の存在感。もちろん、数年後のプロ入りを目指している。

 スーパールーキー佐藤が、神宮の杜(もり)に彗星(すいせい)のごとく現れた。早慶戦初登板となった1回戦でリリーフし、自己最速の148キロを計測。同2回戦では先発を任され、8回11奪三振2失点で3勝目を挙げた。防御率はリーグトップの1・03をマーク。慶大の7季ぶり優勝に貢献し「早稲田に勝って優勝したかった。これを自信に成長したい」とさらなる飛躍を誓った。

 課題の制球力を克服して、秋に急成長した。今春は5試合に登板したが、夏には制球が定まらずCチームまで降格。「春のリーグで死球を当ててから、うまくいかなくなった。このまま終わって後悔したくなかった」と、もがき続けて出した結論がスライダーだった。握りを変えてから「カウントが取れるようになった。今までは制球が良くなくて、困ったら直球だった。投球の幅が広がった」。大学入学後の筋トレでキレを増した直球に縦横2種類のスライダーを組み合わせ、一躍3年後のドラフト候補に躍り出た。

 秋の大学日本一を狙った今月の明治神宮大会は、環太平洋大(中国地区)相手に登板機会がなく、初戦敗退した。それでも目標は変わらない。「1学年上の秋田商・成田翔さん(現ロッテ)も、1学年下の大曲工・藤井黎來君(広島育成2位)もプロに行った。自分もプロで活躍して、何かしらの形で地元に貢献したい」。陸の王者を支える左腕が、鳳凰(ほうおう)のごとく羽ばたく。【高橋洋平】

 ◆佐藤宏樹(さとう・ひろき)1999年(平11)2月18日、秋田・大館市生まれ。桂城小4年から野球を始め、大館一中では軟式野球部。大館鳳鳴では1年夏からベンチ入りし、最高成績は2年秋の県4強。3年夏は初戦2回戦敗退。AO入試で慶大に合格。179センチ、75キロ。左投げ左打ち。家族は両親と妹。