神宮球場から約700メートル。

 ヤクルト徳山武陽投手(28)の仕事場は慣れ親しんだマウンドから球団事務所へ変わった。

 球団広報への転身。スーツに身を包み「気持ち的にはスッキリしている。球団事務所で頑張っていきたい」と意気込む。

 戦力外通告を受けたのは10月3日だった。約1週間後に「予定がなければ球団の方で働かないかと声をかけていただいた。決断は早かったです」と球団職員としての誘いを受け、ユニホームを脱ぐ決断をした。

 引退への迷いはなかった。16年11月に黄色靱帯(じんたい)骨化症の手術を受けた。「回復が早かった」とリハビリを続けると順調に状態が戻り、17年4月末に2軍戦に登板できるほどになった。だが「体の状態は80%くらい。左太ももから臀部(でんぶ)のしびれがコンスタントにあった」と100%の状態になることはなかった。「2軍で抑えられても、1軍で抑えられるか。来年、これ以上の体の状態に戻すのは厳しいのではないか」。自らに問うと、答えは自然と出た。

 迎えた9月29日、イースタン・リーグの日本ハム戦(鎌ケ谷)。プロ最終登板で初完封を達成した。「最後の試合がいい形で終わって充実感があった」とやりきった思いで満たされた。

 15年には中継ぎとして39試合に登板。「優勝した時が1番印象に深いです」と同年のセ・リーグ優勝に貢献できたことが胸に残る。18年1月から正式に球団広報へと所属し、業務に携わっていく。「新たな道で頑張りたいです」とボールをペンとパソコンに持ちかえ、第2の人生を歩む。【ヤクルト担当 島根純】