楽天の星野仙一球団副会長が4日午前5時25分に死去した。70歳だった。担当記者が悼む。

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 情報通で、最新の球界事情や裏話に精通していた。球界の重鎮だから当然ではあったが、なるほどと思わされたことがある。

 星野監督 「監督、知ってますか?」と言ってくるヤツがおる。とっくに知ってるけどな。でも「そうなのか。知らんかった。ありがとう」と言うんだ。そいつはうれしくなって、また何か教えてくれるわけだ。

 007ばりの諜報(ちょうほう)活動のよう。うれしそうに“コツ”を教えてくれた。「ゴルゴ13」が好きな監督らしい。ただ、打算だけでそう振る舞っていたわけではないと信じている。優しいから、相手をガッカリさせたくない気持ちも強かったはずだ。

 14年限りでユニホームを脱いだ。最後にと、シーズン後、担当記者一同を仙台・秋保温泉の高級旅館に招待してくれた。監督の部屋に集まり、監督はお茶を、記者陣は魔王や甕雫といったレアな焼酎を片手に、日付が変わっても話は尽きなかった。楽天のこと、野球界のこれから、思い出話。あっという間に深夜2時、いや3時だったか。さすがに、みんな睡魔に襲われたが、記者の方から寝ましょうと言えるわけがない。ふと腕時計を目にした監督が「なんや、もうこんな時間か」でお開きになった。後日、球団の人に「あいつらが寝させんかった」と言ったと聞き、みんなで大笑いした。そういう人だった。

 「俺は人間が好きだ」が口癖。相手が偉いからとか、有名だからとか、関係ない。居合わせた見知らぬ人と話に花を咲かせる姿を何度も見た。怖いイメージは(負け試合直後をのぞけば)担当になってすぐに消えた。ただただ「優しい人」。仙台で1人暮らしをしていた記者に、本気で彼女を探そうとしてくれたこともあった。結婚し、やっと子供が生まれたことを報告したら、目尻を下げてくれた。しつけはどうしたらいいか聞いたら「子供には、良いことと悪いことの違いだけ教えればいい」と即答された。大切に、心に留めている。(11~14年楽天担当・古川真弥)