粋な演出だった。楽天則本昂大投手(27)が、今季の開幕投手に決まった。久米島キャンプ第2クール初日の6日、梨田昌孝監督(64)は「本当はバレンタインデーに言おうと思っていたんだけど。背番号14だし。則本でいきます」と、則本が3月30日のロッテ戦に先発すると明言した。だが、則本に伝えたのは梨田監督ではなかった。

 キャッチボールの開始前、佐藤投手コーチが「開幕行くぞ」と声を掛けた。「今までは全部伝えていた」という梨田監督が、あえて佐藤コーチに伝達を託したのには理由があった。「日本一となった13年。開幕投手の則本が15勝挙げて、その時の投手コーチが佐藤。監督が星野さんで。今年は星野さんも亡くなられて。そういう年だと思う。僕が伝えるよりも、当時を知っている佐藤コーチが言う方がね」と説明。「星野さんに『うまいこと考えるな』って言われるか、『お前が言え』って言われるか分からないけど」と笑った。

 今季のチームスローガンは「日本一の東北へ」。目指すは13年以来のリーグ優勝と日本一。1月4日に亡くなった星野仙一元監督(享年70)にささげる意味も込められている。そんな年の大事な舞台に則本が満を持して向かう。2年ぶり5度目の大役に気合満点だ。

 則本 143分の1だけど、その1は、スタートの1でもある。チームに波を持ってこられるような投球をしたい。

 この日は、ブルペンでスライダー、チェンジアップなどの変化球を解禁するなど、今キャンプ最多の115球を投じた。3月に行われる侍ジャパンの強化試合(オーストラリア戦)の候補としてもリストアップされているエース。「プロ野球開幕の日。重要な意味を持つ」と照準を合わせていく。【栗田尚樹】

 ◆則本の開幕投手 新人の13年から16年まで4年連続で務めた。入団1年目からの連続では野口明(セネタース)の5シーズンに次ぎ、沢村栄治(巨人)に並ぶ2位タイ。昨季はWBC出場が配慮されたこともあり連続記録はストップ。開幕投手には岸が指名され、岸のインフルエンザにより美馬が急きょ代役となった。則本は14年に西武から10個、16年にソフトバンクから11個の三振を奪っている。開幕戦で3度の2桁奪三振なら、松坂(西武=02、03、05年)に並ぶ史上最多タイとなる。