今年は「インスラ」が映える。巨人菅野智之投手(28)が13日、ブルペン入り。春季宮崎キャンプ打ち上げとなる第3クール最終日に76球投げ込んだ。昨季は右打者の被打率が2割8厘。左打者の1割8分3厘より悪く、右打者対策のためのスライダーを内角へと重点的に15球投じた。実戦を意識した配球も見せ、明日15日から始まる沖縄・那覇キャンプで調整のペースを上げていく。

 ブルペンに響いたのは「いいね」でなく「エグい」だった。菅野の投球が30球を超え、右打席に豊田投手コーチが立つ。スライダーを投げると合図を出し、腕を振るとボールは豊田コーチの肩口に一直線。ぶつかると思った瞬間、ギュンと曲がり、捕手が内角に構えたミットに突き刺さった。内角いっぱいに入るストライク。右打者をのけぞらせる変化球を「右には去年若干、分が悪かった。対策としてもう1つ武器を持っていたい」と説明した。

 右打者への脅威を示した。40球目に内角へのスライダーを見せた後、41球目に外角低めへの直球を投げた。打席に立った豊田コーチは「ここ(内角)来て、そこ(外角)に来られたらすごい遠い」とうなった。内角をえぐり上体を起こさせることで打者は踏み込めず、外角低めの直球が遠く感じて、映える。菅野は「スライダーがあるということはバッターは相当嫌だと思う」と効果を強調した。

 広がりも生む。今季は新球のシンカーを習得中。「食い込んでくるボールと逃げていくボール。幅広く使えるんじゃないか」と左右の変化で打者を迷わせる。ブルペンでは変化球をボールゾーンにだけ投げ込むなど曲がりの感覚を確認。「どこまでがセーフティーゾーンで、どこから曲げるか」と実践的にストライクを奪うポイントを探した。

 15日からの沖縄キャンプでは「フリー打撃も投げる」と実戦形式での調整を意気込む。全ては右打者の被打率2割8厘を下げるための準備。「インスラ」の使い方が、全球種の出来栄えをさらに美しくする。【島根純】

 ◆菅野のインスラ 右打者への内角スライダーは、打者の頭の中に予測しづらく、意表を突く球として、これまでも投げてきた。象徴的なのは13年の交流戦西武戦で同点の9回2死一、二塁。片岡に外角スライダーを続けるも粘られ、10球目にインスラを選択し、見逃し三振を奪った。それでも1つ間違えば打者に危険な球で多投はしていない。