首位広島は阪神に延長戦で競り負けた。連勝は5で止まったが、高橋大樹(ひろき)外野手(23)が4年ぶりスタメンでプロ初安打を含む2安打をマーク。12年ドラフト1位で龍谷大平安(京都)から入団した6年目。23日に死去したOB衣笠祥雄氏の高校の後輩が喪章をつけた試合で待望の第1歩を記した。
鋭いライナーが左翼の前ではずむと、高橋大がほえた。2回1死で、カウント2-2から岩貞のスライダーをたたいた。同期入団の鈴木もベンチで大喜びする、記念の安打となった。
「やっと出て良かった。追い込まれてからは、三振しないようにコンパクトに打った。2軍でやってきたことを出せた結果です」
反省を生かした。春季キャンプ中に紅白戦で本塁打を放ち、1軍昇格。その後は尻すぼみで開幕は2軍で迎えた。「1軍にいる時は遠くに飛ばすことばかり考えていた。それが良くなかった」。センター中心の基本を思い起こし、2軍で3割7分の高打率を残した。
衣笠氏をしのんでチーム全員が喪章をつけて臨んだホーム3連戦の3戦目。高橋大は天国の大先輩に成長を示した。今季初めて1軍昇格した24日に衣笠氏の訃報を知り、悲しんだ。「ずっと気にかけてもらっていたので…」。12年のドラフト指名後に関係者を通じ、食事に同席した。緊張で会話の中身は覚えていない。
「ただただ、いい人。ずっと笑ってました。すごくしゃべりやすかったのを覚えている」。2215試合連続出場の鉄人に、優しい笑顔で励まされた。3年前にも食事したのが最後の会話。「忍耐」とメッセージが添えられたサイン色紙を今も大切に持っている。
安打後は菊池の押し出し四球で先制のホームを踏み、初得点も記録した。6回の打席でも岩貞の高め直球を左前にクリーンヒットを放った。14年6月19日楽天戦以来のスタメン。丸の故障離脱によって巡ってきたチャンスでアピールした。緒方監督も「思い切りがいいね。ナイスバッティングだった」と評価した。
活躍が惜しくも白星に結びつかず、高橋大は静かにうれしさをかみしめた。「見てくれてたら、衣笠さんの喜ぶ顔が見られたのかなと思う。次は勝ちにつながる打撃をしたい」。ドラフト1位入団から苦労を重ね、ようやくスタートラインに立った。【大池和幸】
◆高橋大樹(たかはし・ひろき)1994年(平6)5月11日、大阪・藤井寺市生まれ。道明寺東小3年から「大井リバーサイド」で野球を始め「河南シニア」では中3でAA世界大会出場。龍谷大平安では2年夏と3年夏に甲子園出場。高校通算43本塁打。12年ドラフト1位で広島入団。今季の推定年俸は550万円。愛称「ほんこん」はお笑いタレント(写真)が由来。181センチ、86キロ。右投げ右打ち。