過呼吸だろうがエースは勝つ! 楽天則本昂大投手(27)が、昨年8月12日オリックス戦以来となる完封勝利を挙げた。正念場の8回に過呼吸を発症。いったんベンチ裏に下がるもマウンドに戻り、9回を1安打無失点にねじ伏せた。ハプニングにも動じず今季3勝目をマーク。これで対オリックスの連勝記録を6に伸ばし、チームを今季初の3連勝に導いた。

 則本が背中を丸めた。シャットアウトが見えた2点リードの8回、先頭のT-岡田。カウントは2-2。82球目を投げ終えた後だ。苦笑いを浮かべ、胸を大事そうにさすった。捕手の嶋が駆け寄り、ベンチに対して合図した。慌てふためく首脳陣。ここまで被安打「1」。無失点投球を続けてきたエースの姿に、球場も異様な空気に包まれた。トレーナー、佐藤投手コーチに付き添われ、則本はいったんベンチ裏に戻った。

 数分後。則本は戻ってきた。投球練習を再開し、83球目を投げ込んだ。そこから2球続けてファウルとされたが、最後は宝刀140キロスプリットでストライクゾーンから一気に落とした。次打者の安達にはスライダー。中島には、141キロスプリットをワンバウンドさせた。まるで何事もなかったかのように3者連続三振に仕留めた。

 過呼吸だった。

 則本 よくあることなんですけど、今日ここまでなったのは初めてですね。

 過呼吸を和らげるため、イニング間にはストレッチポールを使い、胸を広げ、酸素を行き届きやすくした。9回は珍しくガムを口にし、マウンドに上がった。「少しでも心拍数を整えるため」。大きく息を吸い込み、最終回も3者凡退。気合でつかんだ今季初の完封勝利だった。

 前回登板の5日西武戦。試合前、森山投手コーチに「今日はほえていきます」と宣言した。先輩ヤンキース田中のように、感情を前面に出すことをイメージしていた。「最後まで立っていますから」と続けたが、結果的に今季最短の3回KO。表ににじむ気合が、力みとなった。自身2連敗で迎えたこの日。「ここまでふがいない試合をしていた。初回から飛ばしていけた」と自らへの怒りを快投に変え、過呼吸さえ、誘発した?

 チームは今季初の3連勝で、初のカード勝ち越し。エースは「前だけ見ていく」と呼吸を整えた。【栗田尚樹】

 ◆過呼吸 陸上の長距離競技の後などに、必要以上の換気活動を行うこと。程度が強くなると、頭のふらつきや手足のしびれを生じることもある。極度の緊張が原因とされる過換気症候群と症状が似ており、則本のケースはどちらか微妙。