阪神は、最後は劇的勝利をイメージできる状況まで持っていった。あと1本、だった。「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム戦。3点を追う9回表、2死から3連打で代打伊藤隼の右越え2点三塁打が飛び出す。ついに1点差でなおも2死三塁。最後は途中出場の原口のバットが空を切った。あと1歩のところで接戦を制すことはできなかった。ただ、今季最多のチーム16安打という数字に光が見えたのも事実だった。

 金本監督は打線について「殻を破りつつあるのかなと思っています」と力を込めた。前日10得点した打線はこの日も反発力を持っていた。1点先制された直後の4回は26歳陽川が3点二塁打。5点を追う7回には36歳コンビの糸井、鳥谷がタイムリー。そして9回は29歳伊藤隼が2点打。若手、中堅、ベテランがバランスよく4本の適時打を重ねた展開に、指揮官は「前向きにとらえたいし、チームとして自信を持ってほしいですね」と強調した。

 大勝で2位に浮上した前夜、試合後に山脇スコアラーの逮捕がチーム全体に伝えられた。この日の練習前には球団側が首脳陣、選手の心情を配慮し、事件に関するユニホーム組への取材自粛を求めた。ナインもダメージを抱えた状態での一戦に敗れた。順位は2位で変わらずも5割復帰失敗で借金は2となり、セ・リーグ最下位の中日に1ゲーム差まで迫られた。ただ、前向きな要素は確実にあった。踏ん張りどころだ。【佐井陽介】

 ▼阪神が今季最多の16安打を放ちながら敗れた。16安打以上を記録しての黒星は、10年6月13日ロッテ戦で18安打しながら8-9で負けて以来、8年ぶり。