最後の最後でつかまえた! 16日の「日本生命セ・パ交流戦」楽天戦(楽天生命パーク宮城)で阪神打線が9回に楽天のエース則本をとらえ、逆転勝利を飾った。中谷が右越えの同点適時二塁打。さらに代打原口がつなぎ、最後は高山が決勝の左前適時打を放った。過去3度の対戦で勝てなかった則本に土をつけ、借金は1。リーグ2位浮上で、首位広島とは3・5ゲーム差だ。

 二塁上で激しく手をたたき、中谷が感情を爆発させた。試合中はめったに見せることのない白い歯を光らせて、喜びを表現した。チームが苦しめられた則本のスライダーを、中谷のバットがついにとらえた。1点を追う9回1死二塁。カウント1-2から外角のスライダーに体ごと踏み込んだ。右中間にはじき返し、代走熊谷を迎え入れた。

 中谷 すごい投手なので何も考えず、食らいついていこうという思いだけでした。勝ちにつながったのはよかった。

 その後も代打原口が左前打でつなぎ、1死一、三塁から代打高山。初球の外角フォークを左前に運んだ。決勝適時打は「ただ振っただけ。逆方向? そんなこともまったく考えてなかった」と無我夢中。2戦連続でスタメンを外れ、この日は代打。初見で打つには難しいであろう強敵を、1球で沈めた。則本をマウンドから引きずり降ろした。

 天敵中の天敵だった。則本には過去3試合で2敗。防御率0・72と封じられていた。犠打を多用しても、8回までは三塁すら踏めない。9回はまさにラストチャンス。先頭伊藤隼が四球を選ぶと、鳥谷が犠打を確実に決めて流れをつくった。そして中谷が意地の快打。5回無死二塁でバントに失敗しており「なんとかかえしてやろうと」と集中力を見せつけた。

 得点圏で打てないと嘆いてきた指揮官も、目を見張った。自らの経験も重ね「同点、勝ち越しの場面よりも、負けているところでの得点圏は一番プレッシャーがかかる。特に9回だからね。しかも2ストライクを取られて、最高の結果。勝負強いところを見せてくれた。最後に3人が得点圏でババッと打ってくれて。見事でした」と集中打を手放しで称賛した。

 チームは連勝でカード勝ち越しを決め、リーグ2位に浮上。借金は1まで減らした。「則本相手に9回にひっくり返すというのは、本当にチーム力というか…。自信にしてほしい。手応えを感じてほしいですね」と指揮官。勢いに乗れる勝利だ。1勝で終わるにはもったいない。【池本泰尚】

 ▼阪神は則本が先発した楽天戦で4試合目にして初勝利し、初めて黒星もつけさせた。9回1死二塁で中谷が同点二塁打、1死一、三塁で高山が勝ち越し打。得点圏では、初対戦からこの日の8回まで延べ25人がノーヒットを続けていたが、ようやくチャンスを生かして難敵をKOした。