全イの4番に座ったヤクルトのドラフト1位村上は、唇をかみしめながら表彰式を眺めた。「出るからには賞を取りたかったです」。3番清宮、5番安田と“高卒ドラ1クリーンアップ”の真ん中を任され「2人と組めることはうれしい」としながらも「自分は自分ですし、そういうのを気にしないタイプなので」と集中。3打数1安打1盗塁と結果を出したが、悔しさが先行した。

 残した数字にたがわぬ能力を示した。2回の第1打席の初球、広島塹江の153キロ直球を中前へはじき返した。続く安田の3球目に盗塁成功。「積極的に行くのが僕の持ち味。盗塁はチャンスがあれば行こうと決めていました」。イースタン・リーグで安打、盗塁でトップを走り、6月の月間MVPも受賞。188センチ、97キロと恵まれた体を余すことなく生かしてみせた。

 周囲の期待にも舞い上がらず、現在地を見詰める。試合中に清宮、安田と打撃論を交わし、未体験の感覚を言葉で学んだ。それでも「同じ左打者なので勉強にはなったけど、自分の感覚を大事にしたい」と言い切った。「ここが目標じゃない。一流になるためにがむしゃらに食らいついて、早く1軍で活躍しないと」。スポットライトを浴びる同世代のスターを横目に、信じた道を突き進む。【桑原幹久】