4番の意地が勝利を呼び込んだ。1点を追う6回裏無死一塁。オリックス吉田正尚外野手(25)が日本ハム村田の直球をとらえた。打球はセンター右を抜け、同点のタイムリー二塁打になった。「つなぐ気持ちで打った。チームもいいところにいる。1試合の勝ちは重い。少しでも貢献できれば…」。続く伏見のバントで三塁に進み、6番安達の犠飛で決勝のホームを踏んだ。球宴コンビの活躍で、再逆転に成功した。

 吉田正は自責の念にかられていた。初回無死満塁の好機で、打ち損じの二飛に倒れた。結局、この回は無得点に終わる。「1打席目がショックだった。DHなので、考える時間が多くて。そこは難しいところだった」。体調面を考慮され、6月下旬から指名打者での起用が増えた。「ベンチで球をしっかり見ることを意識している」。守備に就かない分、気持ちの切り替えは難しい。グラウンドに視線を送ることで、試合に集中することを心がけている。

 過去2年は故障に泣かされ、シーズンを完走できずに終わった。今季は開幕後も、先を見据えてトレーニングを継続してきた。交流戦でMVPを獲得し、球宴にも初出場。「交流戦やオールスターをモチベーションにやってきた。次は最後まで完走すること。今のところ、いい方向にいっている」。吉田正という柱がしっかりしていれば、チームが揺らぐことはない。カード勝ち越しで、ソフトバンクと同率3位に浮上。前夜は大勝し、この日は粘りを見せて競り勝った。福良監督は「4番の仕事をしてくれた。今日の勝ちは大きい」と目を細めた。あす20日からはロッテ、西武、日本ハムと3カード連続敵地で戦う。「上位のチームに追いつけるように、1勝が大切になる」。吉田正は気合を入れ直した。【田口真一郎】