中日吉見一起投手(33)が、2193日ぶりの完封勝利(4勝目)を挙げ、チームの連敗を5でストップした。ヤクルトの強力打線を相手に、巧みな投球と配球で的を絞らせず、わずか3安打に封じた。無四球完封は12年8月8日の広島戦以来。ヤクルト相手の先発では、ナゴヤドームで11年から負けなしの9連勝。力強いピッチングでチームを救った。

 巧妙かつ精密なピッチングだった。140キロ前後のストレート、スライダー、フォークなどの変化球。持ち球をコーナーにちりばめ、ヤクルト打線を手玉に取った。わずか3安打。三塁を踏ませないほぼ完璧な投球。それが「したいなとは思ってましたが、まさかできるとは」という12年8月8日広島戦以来の完封を無四球で飾った。

 1巡目から内角を使い、7回、先頭の山田哲の打席で“秘策”を披露した。カウント0-2から外へ2球外し、5球目は意表を突く内角へのスライダー。まさかの“フロントドア”に驚いたように山田哲はバットを出し三振に倒れた。

 ヒントは前日の新幹線の中で見つけた。移動の最中、インターネットでその日のヤクルト-DeNA戦をチェック。DeNAウィーランドの投球を見て「外一辺倒だと抑えられない」と感じ、バッテリーを組む松井雅に「こんな攻め方もあるよ」と試合前に提案していた。吉見は「まさかあそこでとは」と笑い、サインを出した松井雅は「(打者の)反応を見てなので。行けるかなと」と満足そうに話した。

 吉見は完封よりも、無四球を喜んだ。「うちは四球が多すぎるんで。僕の中では四球はムダな出塁。出すのがイヤなんです」。歩かせれば安打と同じ。右腕が自ら、チームに手本の投球を見せた。打っても4回に決勝となる先制の左前打。打って投げての大奮闘だった。

 これで、ナゴヤドームで先発したヤクルト戦は、11年から9連勝。中継ぎの1勝を入れれば10連勝だ。登板前に意識したのは「連敗を止める」「勝って(今日先発の)小笠原につなぐ」「前回(イニング)途中で降板しているので、投げきって終わる」の3つ。すべてを最高の形で成し遂げた。森監督は「5連勝5連敗で死にかけていたけど、地元に帰って生き返った感じかな。吉見らしい投球をしていた」と右腕をたたえた。【高垣誠】