ソフトバンクを支える人々にスポットを当て、随時掲載する「支えタカとよ」。今回は子どもたちに野球を教える球団のスポーツ振興部から6月に異動となった柳瀬明宏1軍打撃投手兼チーム広報(35)です。

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シーズン途中の6月に急きょ、現職に異動となった。「不安の方が大きかったですね」。昨年は阪神に所属し、オフに現役引退。球団職員としてソフトバンクへ戻った。新垣渚氏らと子どもたちに野球を教えることが仕事だった。異動を伝えられてから、準備期間はわずか2週間。ドーム内の施設で投げ込み、肩を作った。

「デビュー登板」は6月8日の中日戦の試合前練習。昨年まで現役だったこともあり、手元でキレのある球を投げ、選手からも好評だ。「キレがあると言われるのも複雑。やっぱり気持ちよく打ってもらいたいですから」。1日の登板は20分間だ。ビジターではフリー打撃の捕手も行う。「怖いですよ。(先輩たちは)コースや変化球、クイックなど、選手からのリクエストに全部対応している。新しい発見ばかりです」とキャッチャーマスク越しに球筋や技を盗み、野手たちの打つポイントなどを勉強している。

試合開始と同時に打撃投手から広報へ。試合中に選手のコメントを聞き、パソコンを使って、マスコミなどに配信する。「しゃべった言葉を文字にするのはすごく難しい。変えるとニュアンスが変わってしまう」と気を配る。夫人でタレントの坂井汐梨からも言葉遣いのアドバイスを受ける。「今の言葉を文字にする時、『ら』が抜けていたよとか。頼もしい」と照れた。

昨年、阪神で過ごした経験も大きい。「報道陣の数も違うし、熱気も違う。よくても悪くても書かれる。でも、どうせ書かれるなら自分の気持ちを伝えた方がいい」。現役最後の登板となった17年6月23日広島戦では1回で8失点。「自分の力のなさだと思う」というコメントを残した。

「今の選手も打たれた時は(コメントを)出したくないという時もあるけれど、そこはなるべくないようにしたい。選手が本当に思っている事やその選手らしさをもうちょっと引き出したい。一緒に現役をやっていた強みを生かしたいですね」。選手たちのリアルな声を届けていく。【石橋隆雄】

◆ソフトバンク柳瀬1軍打撃投手兼チーム広報の1日(本拠地でのナイターの場合)

午後0時30分 球場入り

午後1時 アーリーワーク(早出特打)の球拾いなど。その後、ストレッチなどで準備

午後2時20分 打撃練習開始。今は1組目に登板。時間は20分。その後は外野で球拾い。練習終了後は自分のためのトレーニング、ケア。シャワーを浴びユニホームからポロシャツへ

午後6時 試合開始。パソコン持参で選手サロンへ。モニターで試合状況を確認。試合中のコメントを配信。

試合終了 ヒーローインタビューなどの準備。取材終了後に帰宅。

◆柳瀬明宏(やなせ・あきひろ)1983年(昭58)7月8日生まれ、広島県出身。如水館-龍谷大を経て05年に大学・社会人ドラフト6巡目でソフトバンク入団。1年目から中継ぎとして活躍。右肘を手術した影響で10年オフに育成選手契約。12年6月に再び支配下登録された。17年は阪神でプレーし、現役を引退。通算218試合、11勝6敗8セーブ52ホールド。176センチ、78キロ。右投げ右打ち。