冷たい雨が降る厳しい環境を、強い気持ちではね返した。日本ハムのニック・マルティネス投手(28)が7回を5安打1失点(自責0)で10勝目。来日1年目の助っ人投手としては、10年ケッペル以来、8年ぶりの2桁勝利を手にし「この困難の中、ファンの皆さんと僕らは、同じ体験をしているひとつの仲間。この1勝をファンが喜んでくれたら」と、願った。

ぬかるむマウンド、ぬれる指先、そして視界を遮る激しい雨。「難しいコンディションだったので、天候に左右されないよう、集中力を切らさずに投げた」。先頭打者に安打を許した1回こそ守備の乱れもあって1点を失ったが、味方が勝ち越した2回以降、走者を出しながらも粘り強く要所を締めた。

6日未明に発生した地震を思い出すと、今でも恐怖が込み上げる。地震が多い米国カリフォルニア州出身のレアード、トンキンら同僚助っ人たちと違い、フロリダ生まれのマルティネスにとっては人生で初めて経験する大きな揺れだった。「地震が起こると津波が発生するという予備知識があったので、怖かった」。すぐに、米国へ戻っていた妻と子どもに連絡し「大丈夫」と伝えた。

停電で部屋は真っ暗。水は出たけれど、食糧が何もなかった。札幌市内の同じマンションに住むレアードの部屋に避難すると、そこには温かな空間が。ハロウィーン・パーティーのために用意していたキャンドルに明かりをともし、豚肉とライスを合わせたレアードの手料理を食べると、不安でいっぱいだった心も、おなかも満たされた。キャンドルを囲み、トランプなどに興じて夜を明かした。

「北海道は僕のホーム。北海道としても、大きな勝利になったね」。地震発生から3日目。恐怖に震えた第2の故郷に、笑顔を届けた。【中島宙恵】