小さな巨人の力で、巨人の背中に急接近! DeNA東克樹投手(22)が、8回1安打1失点で11勝目を挙げた。7回途中までパーフェクト投球で巨人打線を沈黙させ、巨人戦5戦5勝とキラーぶりを発揮。新人ながら防御率2・54で1位菅野に肉薄した。チームも3位巨人と0・5ゲーム差に迫り、クライマックスシリーズ(CS)出場圏内の3位が見えてきた。

パーフェクトがついえても、東はマウンドで笑みを浮かべた。7回2死まで無安打無失点。巨人マギーに右翼スタンドへ運ばれる1発にも動揺はなかった。「ヒットじゃなくてよかった。バタバタ崩れるよりもランナーが出ずに点を取られてよかった」。駆け寄るロペスから「リラックスすれば大丈夫」と言われた。続く4番岡本を二ゴロに打ち取り、最少失点にとどめた。8回1安打1失点。堂々たる結果を残した。

5回までに6得点の大量援護が、肩の力を抜いた。巨人打線は、先発野手8人全員右打者を並べた。直球を軸にカウントを稼ぎ、チェンジアップで打ち取る。右打者の内と外に投げ分けて、凡打の山を築いた。研ぎ澄まされた集中力で、いつもは口ずさんでしまうスタンドの応援歌も、耳に入ってこなかった。「入り込んでいたのかな?」。自分でも理解できない領域に踏み込んだ。

巨人戦デビュー5連勝。前人未到を1人で歩く。同戦4勝目を挙げた9月5日、富山での試合後。筒香から食事に誘われた。日本海の魚に舌鼓を打ちながら言われた。「投手が投手にアドバイスを求めるのは当たり前。でもバッターが何を考えているのか知るためには、バッターに聞かないと。俺は投手の気持ちを知るために、聞くようにしているよ」。入団当初から先輩投手に助言を求めていたが、打者に聞く発想に目からうろこが落ちた。研究されても、進化の歩みを止めないから抑え続けている。

球団では60年ぶりとなる新人左腕の11勝目で、チームは4位に浮上し3位巨人と0・5差。「巨人に勝ったというより、チームにとっても個人にとっても大事な試合で勝ったことが自信になる」。まだまだ未完成の小さな巨人がDeNAを押し上げる。【栗田成芳】