流れる東京音頭に、揺れ続ける傘…。懸命に腕を振ったが、阪神岩貞祐太投手(27)は止めることが出来なかった。悪癖が顔を出して主導権を渡すと、歯止めが利かなかった。1回に痛恨の6失点。6連戦初戦を4回7失点で降板し「申し訳ないの一言です」とうつむいた。虎党のわずかな希望も消え去る8敗目が、重くのしかかった。

1点の援護をもらって立った1回のマウンド。しかし先頭の坂口を二塁手糸原の失策で出塁させると、リズムが狂い始めた。無死一塁から2番青木を2球で追い込んだが、3球目ファウルの後、4球目を左中間に運ばれる適時二塁打。続く山田哲には2ランを被弾。さらに走者をため西浦に3ランを浴びて1回に6失点。2、3回は立ち直ったかに見えたが、2点差まで追い上げた4回にも西浦に被弾した。

岩貞の悪癖が顔を出した。この日浴びたのは6安打。そのうちフルカウントを含むと追い込んでから4安打を浴びた。カウント0-2から浴びた安打も2本。「有利なところなので、防がないといけないところ。練習します」と猛省した。香田投手コーチも「青木に2ストライクから簡単に適時打。いつもそう。ずっとそう」と厳しかった。

もったいない投球が目立っている。今季フルカウントを含む、追い込んでからの被打率は、メッセンジャーが321打数49安打で1割5分2厘、3被弾に対し、岩貞は243打数50安打で2割5厘、6被弾。同じくローテを守る小野の209打数38安打、1割8分1厘、3被弾と比べても高い数字が並ぶ。

気の焦りか、バッテリーの呼吸か。同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。週の頭を託される左腕だ。期待も責任も背負い、成長の糧にするしかない。【池本泰尚】

▼阪神がヤクルトに完敗し、これでヤクルト戦は8月19日から7連敗。ヤクルトに7連敗するのは、00年5月から7月にかけて8連敗して以来18年ぶり。最下位に沈んだ96年には、4月から7月にかけて15連敗を喫したことがある。