歓喜の輪の中で、広島丸佳浩外野手(29)の最高の笑顔が輝いた。不動の3番として鈴木とともに強力打線をけん引。グラウンド1周のセレモニーを終え「360度見渡したらカープファンが喜んでいた。自分もうれしかったが、さらにうれしかった」と感激に浸った。

この日も1回に先制点をもたらした。田中の中前打、菊池犠打で1死二塁から中前適時打。「タナキクマル」による10球の速攻劇だった。自己最多93打点目が優勝決定試合の決勝打。この回5得点の起点となった。これで45試合連続出塁。自身が15年にマークした球団記録44試合を更新した。

4月28日阪神戦で右太もも裏を痛めた。連続試合出場が700で途切れて1カ月離脱。実は腰痛も併発させていた。「けがをした時点でマイナスにしかなっていない」。悔しさを晴らすように復帰後は打ちまくり、本塁打も急増。出塁率は4割8分を超えている。

「継続は力なり」を象徴する選手だ。「やることはずっと一緒。仕事ですから」。コーチと相談し、考えをまとめた上で打席に入る。ベンチに戻るとメモ。これは千葉経大付時代の松本吉啓監督の教えだ。部員全員がノートをポケットに入れながら練習。気づいたこと、感じたことをその都度書くよう指導された。これをプロでも続けている。

練習量が12球団一ともいわれるチーム内でも屈指。迎打撃コーチは、一流となった今でも連戦のさなかにスイング数が減らないことに驚く。「シーズン中に手のマメが痛いとよく言う。そんな選手は他にいない」。決まってマメができるのは右手小指の付け根付近。対策としてバットを目いっぱい長く持ち、グリップエンドに小指をかける。「ヘッドが利きやすくなる」(同コーチ)といい、アーチ量産にもひと役買った。

鈴木、大瀬良とともにリーグMVP有力候補。2年連続なら球団史上初だ。今後について「新井さんと1日でも長く野球をやりたい」ときっぱり。日本一しか見ていない。【大池和幸】