今季、主役の座はほかの選手に譲った。タナキクの広島田中、菊池のコンビは、泥臭く、献身的にチームを縁の下で支えてきた。2人で800を超える補殺(田中429、菊池403、計832)を記録するなど、緒方監督が掲げる「守り勝つ野球」を実践。2人での大台突破の二遊間はリーグ1組。セ界一の鉄壁コンビが緒方野球の基盤を支えた。

互いに交わした約束がある。「カッとなることはあっても、怒りの感情は伝染する。それはしない」。シーズン序盤から投手陣は安定しなかった。どんなに四球を連発しても、大量失点しても、2人は両手をひざにつけることもしなかった。

丸や鈴木、新井を欠いたシーズン序盤、2人がチームを引っ張った。その後は肩の荷を下ろしたように、成績が下降。打順降格の悔しさも味わった。菊池に続き、田中が1番を外れた8月18日、田中に寄り添ったのは菊池。「あいつの感情を消化するのも僕の仕事」と優しく笑う。目配り、気配りができる。上本が敗戦につながる失策をした8月21日ヤクルト戦後もロッカーまでそばにいたのは菊池。今月22日に大量失点した岡田に言葉をかけ続けたのも、菊池だった。

優勝を目前にした21日から再びタナキクが1、2番コンビを組む。連続フルイニング出場を続ける田中は1番復帰後全6試合で安打を記録。この日は1回に田中の安打から菊池が送る得意の形で勢いづけ、2人で計4安打4得点と勝利に貢献した。最後まで助け合い、補い合いながら攻守でチームを支え、日本一の二遊間を目指す。【前原淳】