5月に支配下選手登録され、ここまでリリーフで46試合登板とフル回転のヘロニモ・フランスア投手(25)、25本塁打のサビエル・バティスタ外野手(26)の活躍もあり、リーグ3連覇を成し遂げた広島カープ。2人はドミニカ共和国にあるカープアカデミーの出身だが、彼らはどんなところで練習を積んで来日し、日本での成功をつかんだのか。そこで本紙記者がドミニカ共和国にあるカープの育成組織に潜入。優良助っ人を生み出す秘密を探った。【福岡吉央通信員】

カリブ海に浮かぶ常夏の島、ドミニカ共和国。首都サントドミンゴから海沿いを東に車で約1時間。サミー・ソーサら多くのメジャーリーガーを輩出している街、サンペドロ・デ・マコリスの郊外にカープアカデミーはあった。

広大な敷地にある投球練習場を訪れると、ブルペン捕手たちが「はい!」「いいね」「もう一丁」などと日本語で声を出しながらボールを受けていた。選手たちが来日後、日本に少しでも慣れやすいようにとの配慮。同国にはメジャー全30球団のアカデミーがあるが、ここでは選手が日本で結果を残せるようにと、日本式の練習で独自路線を歩む。

現在、所属しているのは契約選手4人と練習生17人。3人のコーチと4人のブルペン捕手が練習相手だ。寮費、食費は無料。練習生は無給だが、契約選手となれば契約金と、バットやスパイクなど用具、月給が支給される。練習時間はメジャーのアカデミーの倍以上となる約4時間半。ほとんどの選手はメジャーのアカデミー出身だが、ルーキーリーグや1Aのチームで芽が出ず、セカンドチャンスを求め門をたたいた選手たちが多い。アカデミーには4人のスカウトと8人の情報提供者がおり、トライアウトにはスカウトが目を付けた選手らが毎週5~10人ほど訪れる。「日本で何年か結果を残せばメジャーに行けるチャンスもあるぞ」が、スカウト陣の口説き文句だ。

練習嫌いのドミニカ人にとっては想像を超える練習量。全体練習後には、メジャーのアカデミーにはない、タオルを使ったシャドーピッチングや数百回の素振りも課される。生き残りも過酷だ。トライアウトを受けた選手の中で練習生になれるのは年間20人ほど。その中で、成長が認められた者だけが契約選手となり、その中から選ばれた選手が春秋のキャンプに練習生として送り込まれる。

04年から3年間、広島でプレーしたファン・フェリシアーノ投手コーチ(38)は「彼らはメジャーのアカデミーで技術的なことをあまり教わっていないが、ここで指導を受ければまだ成長できる。米国の野球は楽しむものだが、日本の野球は仕事。勝つための野球を教えている。それを理解して頑張った者だけが日本に行ける」と明かす。フランスアは当初は制球難で、球速も140キロ前後。バティスタも引っ張り専門で、体が開いて外角の変化球が打てなかったが、アカデミーで練習を積んだことで今の活躍があるのだという。

世界でもカープアカデミーだけ。独自の育成システムが、広島の優良助っ人たちを生み出している。