西武の平井克典投手(26)にとって、忘れられない試合となった。

27日のソフトバンク戦、4-2の6回1死一塁の場面で、3番手としてマウンドに上がった。

松田にフルカウントから四球を与え、続く高田は一ゴロだったが、一塁手山川のファンブルでピンチが広がり1死満塁に。迎えたソフトバンク9番甲斐との対決。カウント2-2からの5球目、スライダーを左中間へ運ばれ、走者一掃の二塁打を許した。結局、一死も取れぬまま逆転を許し、マウンドを降りた。

優勝へのマジックがついている状態で、2位との直接対決。プレッシャーがかかる中での救援失敗。気持ちを切り替えることは到底できず、ベンチでうなだれながら試合経過を見つめていた。「すごく責任を感じていました」。

しかし勝利の女神は、西武にほほえんだ。4-5で迎えた8回2死一、二塁、秋山が打った瞬間、大きい放物線にチームメートは総立ちになった。座っていた平井には、打球がバックスクリーンに吸い込まれていく様子は見えなかった。しかし、歓声で状況はすぐに分かった。

出迎える列の最後尾についた。熱いものが、いつの間にかこみ上げてきていた。「自然と、流れていました」と振り返った。笑顔で帰ってきた秋山と、号泣しながらハイタッチをかわした。「救われました。神様、仏様、秋山様です」。

高校時代も、社会人時代も試合で泣いたことはなかった。野球人生で初めての涙を流した、プロ2年目の9月27日。胸に刻まれた悔しさは、将来への糧となる。「明日も、頑張ります」。帰路についた表情は、明るかった。