エースで優勝に王手をかけた。西武菊池雄星投手(27)がソフトバンクを7回8安打3失点(自責1)に抑え、2位との直接対決3連戦に2連勝をもたらした。チームの連勝を12とし、優勝マジックは「1」。今日29日、勝つか引き分けるかで、10年ぶりの優勝が決まる。本拠地胴上げは20年ぶり。菊池は、プロ入り以来18試合0勝13敗と勝てなかった天敵に初勝利し、涙を流した。

菊池は言葉に詰まった。お立ち台でソフトバンク戦初勝利の感想を聞かれた。「いやあ」と言った後、5秒、10秒…言葉が出ない。目は涙がたまり、赤くなる。インタビュアーにうながされ「大きいと思います」と答えた。チームは10年以来となるソフトバンク戦のシーズン勝ち越しも決めた。「僕の負けが8年間、あったと思う。それに1勝でも貢献できたので、うれしいです」。ちょっと自虐的に答え、ようやく笑みがこぼれた。

最後の7回はリミッターを捨てた。6回裏の中村の勝ち越し2ランをベンチ前で見届け「鳥肌立ちました。球数的にも7回で終わり。絶対3人で抑えたかった。直球中心で」。川島を151キロで一ゴロ。グラシアルは150キロで押し込み一邪飛。最後は柳田を初球、この日最速155キロで二ゴロに切り、激しくガッツポーズ。きっと、これまでで一番力強かった。

お立ち台を下りると「泣いてないですよ」とおどけ、心中を吐露した。

「悔しい思いをずっとしてました。ソフトバンクに勝たない限りは、ファンの皆さんも、チームメートも…。僕自身、エースと呼ばれるけど、そこに勝たないと本当の意味で認めてもらえない。一番大事な3連戦。絶対勝ちたかった」

昔は先輩の背中を追えばよかった。16年オフ、岸が移籍して事情が変わる。同年、初の2ケタ12勝を挙げていた。繰り上がりのように「エース」と呼ばれた。

菊池 エースって呼ばないで、と思ってました。エースじゃない。野手も認めてない。僕も思ってない。誰も。(岸が)抜けたからエースみたいな感じで。

だが「数字で証明するしかない」重圧が、17年16勝の原動力になった。自覚も出た。「若手も増えた。どういう振る舞いをしてるか、見られている」。立場が、大きくしてくれた。

エースの務めを果たし、優勝に王手をかけた。今日の大一番は、2年目今井が投げる。「良い形で送り出せるように。でも今井はハートが強い。大丈夫」。後輩を信じ、輪の中へ飛び出す時を待つ。【古川真弥】

▼菊池はソフトバンク戦に通算19試合目で初勝利。(1勝13敗)。デビューからの同一カード最多連敗記録を続けていたが、13連敗で止めた。