ナゴヤドームで大歓声を受けた男は、岩瀬だけではなかった。中日の黄金時代を支え続けてきた荒木だった。同点の6回に代打で登場。阪神才木と対峙(たいじ)した。フルカウントからの7球目。高めの球をたたき、左翼線に二塁打を放った。

通算2042安打目の一打で好機を演出すると、次打者平田の右前打で激走し、決勝のホームを踏んだ。ベンチでは肩で息をするしぐさもみせたが、相変わらずの俊足巧打。今季限りで現役引退が判明しているベテランは「シーズンをまっとうする」と語る言葉通り、勝利への一打に集中していた。

95年ドラフト1位で中日入団。01年途中からレギュラーに定着。勝負強い打撃と足でプロ人生を切り開き、卓越した守備力でも一時代を築き上げた。勝利への執念は23年目を迎えても変わらない。昨オフの契約更改時には「強くなるための1つのピースになりたい」と語っていた。この日、8回には中前打で再び出塁。直後、けん制で盗塁死を記録してしまったが、これも先の塁を狙う姿勢があるからこそだ。

地元ファンの沸いた今季140試合目。そのヒーローの1人は紛れもなく荒木だった。