ショートから出直します! 阪神鳥谷敬内野手(37)が矢野阪神の本格始動日となった23日、新指揮官に遊撃再挑戦を直訴した。秋季練習初日を迎えた甲子園で面談し、再起に懸ける覚悟を伝えた。左肩亜脱臼からの復帰を目指す北條、快足で勝負する植田らの遊撃レギュラー争いに、虎の生え抜きレジェンドが割って入る。
鳥谷はオブラートに包むことなく思いの丈をぶつけた。矢野阪神が本格始動した10月23日。練習開始前の全体ミーティングが終わった直後に、矢野新監督から呼ばれた。「トリはどう?」。希望ポジションを問われると、迷うことなく遊撃への覚悟を言葉に変えた。
鳥谷 できるできないは別として、もう1回ショートで練習をさせてもらって判断してもらえれば、と。他のポジションがどうこうじゃなく、もう1回自分がしっかり動けるようにするために、もう1回ショートをさせてもらいます、という感じで言いました。
遊撃から三塁へ本格転向したのが昨季。今季は二塁に挑戦した結果、不振に陥りレギュラーの座を失った。ベンチスタートに甘んじた間、二塁には糸原が定着し、三塁にも大山が台頭。ならば、もう1度本職で勝負したいと考えるのは自然の流れだった。激しい動きが要求される遊撃練習から入れば、他のポジションを任された場合でもスムーズに対応できる。チーム、鳥谷のどちらにもメリットのある選択、というわけだ。
遊撃は「自分が一番動きやすい」と言う。1年目の04年から16年まで13年間守り続けたポジション。今季9月28日中日戦で2年ぶりに遊撃復帰した際も、動きに違和感はなかった。再びレギュラーの座に返り咲く可能性は十分ある。
ただ、無条件に居場所を与えられるわけではない。今季再ブレークした北條は左肩亜脱臼から順調にリハビリ中。植田の快足も魅力がある。矢野監督は鳥谷の実績を最大限に尊重した上で「(競争は)もちろん。若手の成長もある中で、そこをトリのために与えるという現状ではない」と強調することも忘れなかった。もちろん、本人も厳しい状況は百も承知だ。
鳥谷 それは自分が決めることではないので。自分のパフォーマンスをオフの間にしっかり上げて、あとは判断してもらえれば。それでチーム事情でポジションが変わることに関しては何とも思わないですしね。
かつては「40歳でも遊撃手」を目標に掲げていた。こだわりを持つポジションへの再挑戦を認められ、意気に感じないわけがない。この日も甲子園室内練習場からは打撃音が響き渡っていた。燃えたぎる37歳の向上心が、虎を活性化させそうだ。【佐井陽介】
◆鳥谷の守備位置 入団2年目の05年から遊撃手として全試合に出場し、12~15年は全イニング出場を誇った鳥谷だったが、16年7月にフルイニング出場が止まると状況に変化が出た。同年9月3日DeNA戦で、新人年以来12年ぶりに三塁に入り、同年三塁で計17試合。17年は三塁手に本格転向し、守備に就いた138試合はすべて三塁手。同ポジションでは初のゴールデングラブ賞を獲得した。今季は3月30日巨人との開幕戦でプロ初の二塁を守り、6月からは三塁手としても出た。9月28日中日戦では、試合途中から2シーズンぶりに遊撃に。今季は二塁手で28試合、三塁手で32試合、遊撃手で2試合の出場だった。